インサイダー情報

 

プライベートビーチ的な海岸。確かに誰もいない。

 

朝食、僕はいつも必ずサラダを食べて、その後、黒パンにチーズ、ハムという「コンチネンタル・ブレックファスト」と、ベーコン、ソーセージ、焼トマトなど、「イングリッシュ・ブレックファスト」を交互に食べることにしていた。食べ終わるともう十時。夕方までは食べなくていいって感じ。事実、僕は滞在中、一度もホテルの昼食をとらなかった。

 スミレがフロントで、ホテルの近くにあるビーチの場所を聞いている。

「これ、地元の人だけの『インサイダー』情報なんですけど、教えてさしあげます。」

フロントの女性が、ちょっと思わせぶりに言って、「秘密のビーチ」なる場所を教えてくれた。どんな場所かと期待が高まる。

午前中、そこへ向かう。ホテルを出ると直ぐに、デッキチェアやパラソル、カフェや食堂が並ぶ、「アギオス・スピリドン・ビーチ」がある。そこは、結構有名なビーチで、スミレもかつて来たことがあるという。そこから更に十分ほど田舎道を歩くと、ホテルの人が言っていた、「秘密のビーチ」があった。ビーチの幅は二百メートルくらい。宮崎県、日南海岸の「鬼の洗濯岩」みたいに平らな岩が砂浜と海を分けている。

「なるほどね。確かに、秘密のビーチやわ。」

先に通った海岸とは違い、そこには十人もいない。ひとりの中年男性が、素っ裸で身体を焼いていた。ドイツには、FKK(フライ・ケルパー。クルツア、自由な身体の文化)という、ヌーディストエリアが沢山ある。このおじさん、おそらくドイツ人。まあ、素っ裸でいても、誰からも非難を浴びないような、人の居ない場所だった。

一時間ほどビーチに居て、「コースタル・ウォーク」(海岸沿いの遊歩道)を通って戻る。カルスト地形というか、石灰石がゴツゴツと立ち並ぶ地形で、歩きにくいが、歩いていて楽しい。足元に広がる海は、ターコイズ・ブルー(翡翠色)をしていて、水はあくまで澄んでいる。途中、体長七、八十センチはある、大きな海亀が死んでいた。足や頭は殆ど朽ちてしまい、甲羅だけが残っていた。

ホテルに戻り、プールサイドを通ると、水球をやっていた。ホテルでは毎日、水球、アクアビクス、ビーチバレーボールやサッカーなど、スポーツのイベントが開催されている。アルバニアの山々からは入道雲が立ち上っている。日本ではよく見たが、久しぶりに見る、本格的な入道雲である。

 昼からも別のビーチに行った。

「とにかく、人のいない静かにビーチに行きたい。」

というのが娘たちの希望。僕は、適当に人がいて、できれば周りに若い女性のいる場所がいいのだが。ホテルを出て、カシオピという、観光地を通り抜け、十分ほど走ると、娘たちの気に入ったビーチが見つかった。幅五百メートルくらいの白い石浜。ただ、そこは全然日陰がない。人も少ない。娘たちは、傘を開いて日よけにして横になっている。

 

コースタル・ウォーク、白い石灰石の海岸を歩く。

 

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