飲み放題食い放題

 

食堂のバフェット。野菜が沢山あるのは嬉しい。

 

四時ごろにプールで泳ぐ。遊泳用のひょうたんの形をしたプール。いつも泳いでいる町営の二十五メートルプールとは勝手が違う。プールの底に線がないので、まっすぐ泳ぐのが難しい。一応、向こう側にある目標物を見ながら泳ぐのだが、クロールでは前が見えないので、なかなか思った場所に着けない。僕はつぶやく。

「オープン・ウォーター・スイミングの選手はどないしたはるんやろ。」

 さて、何度も書くが、今回のホテルは「オール・インクルーシブ」、つまり、食事と飲み物が料金に含まれている。ビール、ワイン、簡単なカクテルなど、バーで注文しても、金を払う必要がない。泳いでシャワーを浴びた後、僕と妻とミドリは、プールバーへ行った。そして、ビールを飲み始める。一杯飲んでなくなれば、またバーで貰ってくることができる。何度か、バーとデッキチェアの間を往復する。

 午後七時半ごろに食事に、大食堂に行く。「バフェット」、日本で言う「バイキング」形式である。結構野菜料理の種類が多く、肉より野菜をたくさん食べる我が家のメンバーには嬉しい品揃え。食堂には何箇所か「タップ」、つまり蛇口が備え付けてある。そこを押せば、ビール、赤白のワインが、それこそ「湯水の如く」出て来るのである。しかし、只酒とは言え、そんなに毎日沢山飲めるものではないけど。

 大食堂に集まった、二百人くらいの泊まり客を見ていると、ほとんどが白人である。アジア系は僕たち家族だけのよう。あちこちでドイツ語が聞こえてくる。ドイツ、オーストリアからの人が多いのだろう。リゾートホテルというのは、時として、爺さん婆さんばかりなのだが、(おまえもその一人やんけ。おっしゃる通り)今回は、若いカップル、また小さな子供を連れた若い夫婦もよく見かける。

 食事を終わって外に出る。プールサイドから日没が見える。夕日を反射した、アルバニアの山々が美しい。周囲の人たちの多くは、まだTシャツと短パンだが、僕にはかなり涼しい気温、セーターが欲しくなってくる。

 翌朝九時頃朝食に行く。外の気温は十七度。朝も、かなり涼しい。しかし、快晴。テラスには乾いた風が吹き渡っている。

「まだスイカがない。」

ギリシアで食べる朝ごはん、夏になるとたいていスイカがある。ギリシアのスイカは甘くて美味しい。しかし、まだ五月、スイカには早すぎるようだ。朝食のとき、何が面白いからと言うと、他の人がどんなものを取るかを観察すること。あるおじさんは、十枚くらいのトーストを山積みして運んでいる。

「あれで、『ジェンカ積み木』をしはるんやろか。」

また、あるおばさんは、皿一杯のパイナップルを取って来た。

「よっぽどパイナップルが好きなんやねえ。何か幼児体験があるんかな。」

なんて想像が広がる。

 

一週間ここで過ごす人もいる、プールサイド。

 

<次へ> <戻る>