海と山の間で

 

プールの向こうは海、その向こうの山影はアルバニア。

 

飛行機は一時間遅れで、午前八時半にルートン空港を出発。東に向かう。飛行機は「イージージェット」という、いわゆる「LCC」(ローコストキャリア、格安航空会社)のもの。フライト情報を写すスクリーンがないので、どこを飛んでいるのか皆目分からない。薄くてちょっと硬い座席はリクライニングしない。

午後二時半、三時間の飛行の後、ケルキラ空港に到着。英国との時差は二時間。英国ではまだ十二時半である。先ほども書いたが、「コルフ」というのは、他のヨーロッパの人たちからの呼び名で、ギリシア人は「ケルキラ」と呼ぶ。

これも先ほど述べたが、コルフ島は、ペロポネソス半島の左側、イオニア海にある。コルフ島には、二十年前に一度、まだ中学生だった息子と、下の娘と一緒に来たことがある。そのときの印象は、ギリシアの島にしては、緑が多いということだった。エーゲ海の島々は、もっと乾いた感じがする。それがギリシアらしいとも言えるのだが。

飛行機から降り立って感じるのは、さすがに英国よりは格段に暖かいということ。でも、僕は、もっと暑いと予想していた。

「結構涼しいやん。」

気温は二十五度前後だろうか。タラップに立つと、風もあり、結構涼しく感じられる。

空港には、表示が英語とギリシア語で書かれている。僕は昔、ギリシア語を結構真剣に勉強していた時期があった。少なくともそのときは、ギリシア文字を読んで発音はできた。今回も、そのギリシア語のサインを読んでみようと思うが、もうすっかり忘れていた。

空港で、僕と末娘のスミレは、レンタカーを受け取って、それに乗って、コルフ島の北にあるリゾートに向かう。妻と上の娘はバスで行くことになっていた。車が小さすぎて、四人と荷物が一台に乗らないからだ。空港の近くのレンタカー屋で、小さな車を受け取り、北に向かって走り出す。コルフ島は山がちの島。先ほども書いたが、雨が多いので、島全体が緑に覆われている。ヘアピンカーブ続出の山道を一時間ほど運転し、無事にホテル、「メールブルー・リゾート」に到着。間もなくバス組の二人も着いた。

リゾートは、一棟十室くらいの二階建ての宿舎が、海を見下ろす斜面に二十棟ほど並んでいる。食事は、一番下にあるプールサイドか、一番上にある大食堂でとることができる。チェックインを済ませ、斜面を下って行くと、眼下に海が見える。その海の向こうに結構高い山が見える。アルバニアである。向こう岸まで十キロくらいしかないようだ。

「どうしてこのホテルにしたの。」

と妻に尋ねる。実際、何百というリゾートホテルがコルフ島にはあるのだ。

「写真で見ると、海だけではなく、向こう岸に山も見えて、きれいそうだったから。」

と妻は答えた。なるほど、確かに海と山のコンビネーションというのも悪くない。

 僕たちは、二つの部屋に落ち着いた。娘たちが一部屋、妻と僕が一部屋、隣同志だ。ベランダからは、海峡とその向こうの山が見える。

 

ホテルは、二重棟くらいの二階建ての宿舎からできている。

 

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