アンティグア島

 

アンティグア・アンド・バーブーダは小さくても立派な独立国。これが国旗。

 

 火曜日の朝八時、船は次の島、アンティグア島のセント・ジョンズ港に入る。アンティグア島は、昨日のトルトラ島よりはかなり開けた場所のような印象を受ける。港には昨日一緒だった「アイーダ」の他に、もう一隻「マイン・シフ・アインス」というクルーズ船が停泊していた。昨日、アイーダの乗客と話したとき、数日の間、ヴェンチューラとアイーダは同じ行程を取り、毎日出会うことを僕は知っていた。

 もう一隻の船「マイン・シフ・アインス」がドイツの船であることは一目瞭然。青い船体一面に、「海の囁き」、「静けさ」、「もてなし」、「真夜中の夢」などの言葉が、ドイツ語でデカデカと書いてあるのだ。

「いくらなんでも、これはちょっとやり過ぎ、悪趣味と違う。」

書いてある文字が全て理解できる僕は妻に言う。しかし、この船のドイツ人の乗客が、結構しゃれた人たちであることが、その日の夕方明らかになるのだ。

 朝食後、八時四十五分に上陸する。船内でも一日観光ツアーも申し込めるが、それは法外に高い。昨日の経験から、数人のグループで地元のタクシーの運転手と交渉すれば、もっと安くて値段で観光できることは知っていた。船内で時々会うインド人のご夫婦の、旦那の方がタクシーの運転手と交渉している。定価があってなきが如しのインドから来た方は、こんな交渉が上手い。

「この運転手が、一人二十五ドルで島を回ってくれると言ってるけど、一緒に来ない?」

と誘われ、それに乗ることにする。誘いに乗った十数人のヴェンチューラの客が、一台のマイクロバスに乗り込んだ。最初の目的地は島の南の端にある、イングリッシュ・ハーバーである。

 ところで、このアンティグア島、種子島とほぼ同じ大きさの島であるが、「アンティグア・アンド・バーブーダ」という立派な「独立国」である。カリブ海には、キューバ、ジャマイカ、ハイチ、ドミニカなどの結構大きな島が西側にあるが、東側は、種子島クラスの小さな島が並んでいるに過ぎない。そして、驚くべきことに、ほぼひとつひとつの島が、全部独立国か、別の国の領土なのだ。

「伊豆七島が、全て別の国だったらどうなるか?」

考えてみると、へんてこな話なのだが、これがカリブ海での現実なのである。

 ジャマイカの陸上選手や、カリブ出身の野球選手を見ても分かるように、カリブ海の島では住人の殆どは黒人である。しかし、この人達は、もともとこの土地に住んでいたのではなく、サトウキビ栽培などのプランテーションのために、アフリカから奴隷として連れて来られた人々の子孫なのだ。

 運転手の話によると、このアンティグアでも一九七〇年代まではサトウキビ栽培がこの島の主産業であったという。しかし、天候がそれほど栽培に向いてないので、現在は観光立国を目指しているということであった。

 

誰が数えたのか知れないが、アンティグア島には三百六十五のビーチがあるという。覚え易くてよい。

 

<次へ> <戻る>