原子構造

 

昨日までの歴史的な建造物と打って変ったアトミウム。九個の球の直径は十八メートルある。

 

翌朝、地下鉄でアトミウムへ行く。「アトミウム」とは「アトム・原子」の構造をそのまま表した建物だと言う。写真で見ると、花見団子とその串を立体的に組み立てたような建築物である。ダンケルクで一緒に働いているF君は、かつてブリュッセルで数か月働いていたことがあった。

「ブリュッセルで面白い場所ってどこ?」

と前日に彼に聞いたことろ、この「アトミウム」が彼のお気に入りの場所だという。それで、日曜日の朝に訪れることにしたのだ。

ホテルの最寄りのロジェール駅から、「アトミウム」の最寄り駅、エイセルまでは地下鉄の六号線一本で行けることは調べておいた。しかし、問題があった。地下鉄が停まったとき、駅名の書いてない駅が結構あるのだ。駅に着いて、そこが自分の降りるべき駅かどうか分からないと、パニクってしまう。ひとつ前の駅で間違えて降りて、次の電車を十五分待った。しかし、無事九時半頃にエイセル駅に着いた。昨日は晴天で暖かい日だったが、今日は曇り空、夜の間に雨が降ったらしく、道路には水溜りができている。

エイセル駅を降りると、そこは見本市会場であった。駅を降りたのは僕一人、外に出ても「猫の子一匹いない」とはこのこと。

「ええ、ここ、観光地じゃなかったの?」

と、不安になってしまう。幸い、アトミウムは大きな建物で、どこからでも見えるので、そちらの方向に向かって歩き出す。五分後にアトミウムの前に立つ。そこには数組の観光客がいるだけだった。アトミウムの開場は十時から。まだ少し早すぎるようだ。

男性二人組から、アトミウムをバックに写真を撮ってくれと言われたので撮ってあげる。そして、僕のカメラで、同じ構図で僕の入った写真を撮ってもらう。その男性は、アジア系の人だが、オーストラリアから来たという。

「きみはどこから来たの?当ててみようか。きみの英語のアクセントからすると日本人じゃないし。モンゴルかい?」

さすがに彼も、ドイツ語訛りの僕の英語から、僕の国籍を当てることはできなかった。

開場の十分前に切符売場に並ぶ。ホテルに戻って十二時までにチェックアウトをしなくてはいけないので、少し急がなくてはいけないからだ。辺りには観光バスが到着し始め、急に人が増えた。

切符を買って、中に入る。切符にはその日の通し番号が振ってあるらしく、僕の切符には「一」と書かれていた。何にしても「一番乗り」というのはちょっと気持ちの良い物。風呂屋に一番乗り「これが本当のセントウ」。

下から見ると大きさを感じないが、中に入ってみると、予想外に大きな建物だった。例えば、「お団子」の部分の直径が十八メートルあるという。「串」の部分はエスカレーターか階段になっていて、ひとつの「お団子」から別の「お団子」に移れるようになっている。

 

球と球を結ぶ回廊はエスカレーターで結ばれている。その中の様子。

 

<次へ> <戻る>