値切りのテクニック

「ガラクタ市」、つまりなくても全然困らない物しか売っていない。

 

その日、東寺の門をくぐると「ガラクタ市」という骨董品の市をやっていて、百件ほどの業者が地面に店を広げてた。露天商ってインドの広場ではよく見かける光景だよね。この骨董市を見て歩くのは面白かった。色々なものがあって、それが殆どあってもなくてもいいような物ばかりなんだ。非実用的な物って、見ていてかえって楽しいよね。

僕はそこで、四千五百円、つまり二十五ポンドと値札の付いた徳利、つまり日本酒、ライスワインを入れて温める容器を半分以下の二千円で買った。なかなか良いなって思って手に取って、底を見ると四千五百円って値札が貼ってあったの。いくら何でも高すぎる、とても手が出ないと思って、そのまま立ち去ろうとしたの。そうしたら、店のお兄さんが、

「三千円にしとくから買ってよ。」

と言うの。

「それでも予算オーバーだからやめとく。」

と言うと、

「じゃあ、二千円。儲けなし。」

そこまで言われたら、買わざるを得ないよね。インド人って皆一応ダメモトで値切るけど、日本では、言い値で買うのが普通。特に僕は値切るのが苦手。なるほど、値切るときはこうやるのかと、テクニックが分かった気がする。一度帰りかけて、相手が呼び止めるのを待つんだね。

「トックリ」って何かって。説明が要るよね。日本の酒は温かくして飲むのが正式なの。そのための首のくびれた陶器の入れ物。変なのって。まあそれが習慣なんだからしょうがないよ。でも、徳利って、花を挿してたら花瓶としても使える。英国のピアノの先生の誕生日のプレゼントにしようと思って。彼がそれをどのように使うか分からないけど。多分、ワインを入れて温めたりはしないよね。

東寺のパゴダ、五重の塔も良かったけど、本殿にある仏像もよかった。普通の仏像ってチンと座っているだけのが多いんだけど。ここの像は、顔にも表情があって、動きの一瞬を捉えたようなポーズ。もちろん、ヒンドゥー教のお寺の像のようにカラフルじゃないけど。それも、シックで良いよ。

 京都の他にどこかへ行ったって。うん、金沢という西海岸の町へ行った。ワイフがここの出身で、僕も大学の頃そこに住んでいたんだ。それで、義父母や妹夫婦に会いに行ったの。え、奥さん抜きで奥さんの実家に行くって、ちょっと変だって。そうかなあ。まあ、これが僕の永年の習慣で、自分では何とも思わないんだけど。

 「新幹線」、「ブレット・トレイン」って知ってる。時速二百マイルくらいで走る日本の自慢の列車。英国の列車の二倍のスピード、インドの列車の十倍ぐらいのスピードが出るんだ。インドの列車もそこまで遅くないって、ごめん。その新幹線が、今年の三月からその新幹線が金沢まで開通したの。新幹線が自分の町を走ることは、日本の人々にとって、すごく誇りなんだ。一月に金沢に行ったときは、期待が高まっていて、カウントダウンが行われていたし。開通した日はお祭り騒ぎだったんだって。鉄道好きの僕としては、今回是非乗ってみたい。 

あ、もう職場に戻らないと。続きは明日のお昼休みね。時差ボケだからデスクで寝ないようにしないとね。新幹線に乗った話は明日の心だぁ。(小沢昭一、知らないよね、当然。)

 

重厚な造りを誇る当時の正門。さすが京都です。

 

<次へ> <戻る>