ウェルシュポニー

 

セント・デイヴィッドの海岸に立つ礼拝堂。絵になる。

 

セント・デイヴィッドに着き、街外れ駐車場に車を停める。街から海岸に出る。海岸には、小さな石造りの礼拝堂が立っていた。海をバックにした礼拝堂は、本当にウェールズらしくて、絵になる。海岸に沿って歩き始める。高さ、五十メートルほどの崖の上を歩く。まだ雲は厚いが、依然気温は高く、十五度以上あり、歩いていると汗ばむ。昨日に続き、快いトレッキング日和である。左手に海を見ながら歩くと、しばらくして、天然の河口を利用した小さな港があった。入り口に立派な防波堤がある。しかし、船は一隻しか泊まっていない。その船も引き潮で、陸地に乗り上げ、傾いている。坂を下り、港のベンチで、セント・デイヴィッドの街で買ったコーニッシュ・パスティで昼食。

港から、陸地を横切って、セント・デイヴィッドの街に戻る。有名な大聖堂を見る。黒い石造りの、シックと言えばシックだが、ちょっと陰鬱な感じを受ける建物。他の大聖堂ほど背は高くない。中に入ると、木で出来た天井だった。内部は非常に素朴で渋い印象。

帰りに魚屋に寄り、注文していた、シーフードの盛り合わせを受け取る。帰り道にスーパーマーケットに寄る。商品の表示は二か国語。ウェールズが上で、大きく書いてある。ウェールズ政府の、ウェールズ語を維持しようという意気込みがうかがえる。その夜はロブスターやエビをたらふく食べた。

辺りの道は細い。車が一台やっと走れるという道が多い。所々にすれ違いの場所が作ってあり、前から車が見えたらそこで待つしかない。不幸にして、見通しの悪い所で鉢合わせになったら、どちらかが、すれ違える場所までバックするのみ。譲り合い精神がないと、ウェールズの田舎道は運転できない。

水曜日になり天気が回復する。朝、窓から海岸に架かる虹が見える。気温はぐっと下がり、風も強くなる。分厚いアノラック等、完全に冬の格好で、デールという村に出掛ける。朝、僕が、夕食のパスタにかけるトマトソースを仕込んでいる横で、妻が飯を炊き、握り飯を作っていた。車で十分ほどの、デールという村を通り抜け、セント・アンズ・ヘッドという岬に着く。ここもナショナルトラスト。駐車場に車を置いて、岬の先端に向かって歩く。灯台があり、航空管制のための塔もあった。沿岸警備隊が常駐しているらしい。ウェールズの最西端ということで、国防上、大切な場所なのかも。

灯台の近くの崖で、湾曲した地層を見ることができる。S字型にグニャリと曲がっている。

「カステラの上にジャムとクリームを塗って、巻いて、ロールケーキを作ろうと思ったら、間違えて落としてしまった。」

って感じ。岩が、こんなにグニャリと曲がるのが、信じられない。ウェールズは、ふたつの陸地がぶつかり、隆起している土地。両側から押すような力が働いたことが明確だ。しばらく海岸に沿って歩くと、馬がいた。もちろん、ウェールズにいるのでウェルシュポニー。僕の働くサンクチュアリにも数頭いる。小型で、厳しい気候にも耐えられる馬。馬の近くで、風が遮られる場所を見つけ、敷物を広げ、昼食に握り飯を食べる。景色の良い場所で食べる握り飯は最高!

 

海岸で草を食むウェルシュポニー。サンクチュアリにいるのとよく似ていて、懐かしい。

 

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