到着

通りかかった三人組の高校生にシャッターを頼んだら、互いに押しつけ合いをした末、一人が撮ってくれた。

 

十九時六分、鹿児島中央着。

「やった〜、やっと着いた。」

やはり嬉しい。ちょっとした達成感。駅前ではクリスマスのイルミネーションが輝き、ライブコンサートが行われていた。通りかかった高校生のお兄ちゃんを呼び止めて、「鹿児島中央駅」と書いた看板の下で記念写真を撮ってもらう。母に電話をし、

「今鹿児島にいるよ。」

と伝える。南九州は気温がまだ十度以上あり、さすがに暖かい。クリスマスツリーがちょっと不似合いな感じがするくらい。

しかし、いつまでも感激に浸ってはいられない。その日のうちに、七時二十五分の「つばめ」で熊本まで戻らないといけないのだ。この「戻り」には結構大きな意味がある。明日、僕は母が病院に行くのに付き添うために十一時には京都にいなければいけない。鹿児島中央発の始発の新大阪行きに乗っても、十一時までには京都に着けない。しかし、熊本まで戻って、午前六時、熊本発の「さくら五四〇号」に乗ると、九時四十二分に新大阪に着き、十時には京都に戻れるのだ。改札口を出て玄関で写真を撮った僕は、その足でまた改札口を通り、停車していた「つばめ三四〇号」に乗り込む。

しかし、朝函館にいて夕方には鹿児島にいる、朝熊本にいて午前十時にはもう京都にいる。すごい時代になったものだ。「つばめ」はJR九州の車両。JR九州は従来の殻を破った、斬新なデザインを列車に施すので有名なのだ。「つばめ」も、椅子が木で出来ており、革張りのシート。車両ごとに基調となる色が違うという、ちょっと洒落た列車だった。椅子に腰を下ろす。

今日は朝から列車に乗るほかは全く何もしていないのに、急に疲れが出てきた。しかし、ずっとやりたいと思っていたことができて、達成感と満足感はあるが。しかし、こんなことで疲れてはおれない。シベリア鉄道では、これが八日間続くのである。

最後に、この旅行の費用だが、交通費はJRパスの二万九千円のみ。これを高いと思うか安いと思うかは個人差があると思う。まともに乗車券、特急券を買うと、函館から鹿児島まで片道で四万円五千円かかる。往復だとその倍の九万円。JRパスがいかにお買い得かがこれで分かると思う。優遇策で外国人観光客を誘致しようという意図が伺われる。何度も書いたが、このパスがあるからこそ、僕がこの旅行に挑戦する気になったのである。

熊本駅に向かう「つばめ」の中で、僕の手元には九枚の座席指定券があった。「京都から東京」、「東京から宇都宮」、「宇都宮から仙台」、「仙台から新函館北斗」、「新函館北斗から盛岡」、「盛岡から東京(立席券)」、「東京から新大阪」、「新大阪から鹿児島中央」、「熊本から京都」の九枚である。僕は、トランプのようにその切符をシャッフルした。

<了>

 

鹿児島中央駅のクリスマスツリー。やはり南国的だ。