世界に誇る日本の技術

驚異的な手際の良さで、車内清掃をする女性のチーム。

 

大宮辺りから見えるのは家の屋根とビルディングばかり。山も緑も少しも見えない。山に囲まれて育って、今も英国のカントリーサイドに住んでいる僕にとって、正直言ってコンクリートジャングルの首都圏は住みたくない地域である。ついでに、偏見に満ちた意見をもうひとつ。ヨーロッパで働いていて、一緒に仕事をする日本人に、

「どちらのご出身ですか。」                                                             

と尋ねると、「東京」と答える人が多い。

「僕の周囲には偶然東京の人が多いんだ。」

と思っていたが、よく考えると、それは当然のことだった。日本の人口の十分の一以上が東京に住んでいるので、東京生まれの人と出会う確率は、長崎県や石川県や鳥取県出身の人に会う確率よりは格段に高いのである。しかし、東京出身の人には失礼だが、

「お国が東京ってなんだかつまらなくありませんか?」

と聞きたくなってしまう。出身を尋ねられたとき、「何々県」という響き方が「聞こえが良い」というのが僕の印象。

僕の友人で、

「結婚する相手は絶対に地方出身の女性。」

と決め手いる奴がいた。

「方言の強い、はっきり言って何を喋っているのか分からないお義父さんと、田舎の家で、地酒を酌み交わすんだ。」                                                                   

というのが彼の夢だった。でも、彼の結婚した相手は、やっぱり東京の女性だった。

東京駅は何時も混雑している。上り新幹線列車が到着し、発車していくまで十分余り。その間に、ピンクのユニフォームを着た清掃員が恐るべき手際の良さで車内を点検、清掃する。座席はボタンひとつで向きを変え、発車の一分前には客を乗せ、定時に発車していく。そのシステムは驚嘆に値する。

そもそも、座席の向きを一斉に変える機構を、ヨーロッパではお目にかかったことがない。ドイツの「ICE」、フランスの「TGV」、英仏の「ユーロスター」、新幹線と同じ時速三百キロで走ることの出来る列車はヨーロッパにもある。しかし、どれも座席は固定で、半分の座席は進行方向を、もう半分の座席は逆を向いている。全部の座席が常に進行方向を向くなんてJRだけ。

「素晴らしい」

僕はうなってしまう。

前々日、函館に向かう際時間があったので、東京駅で改札から外に出ることができた。レンガ造りの正面玄関、丸天井の構造がヨーロッパの教会のように美しい。今日は、乗り換え時間が三十分以内なので、外に出る暇はない。そのまま、東海道新幹線のホームへと向かう。

 

丸天井の梁が美しい東京駅正面玄関。この建物の中にあるホテルも人気があるという。

 

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