函館

函館到着。北海道日本ハムのエース大谷選手が迎えてくれる。

 

窓口で、「十一月二十九日使用開始、期限十二月五日」と書いたパスを受け取る。国籍欄「ジャパニーズ」の横に、「海外永住者」というスタンプが押してある。その次は、座席指定券の手配である。JRパスを持っていると、無料で座席予約ができる。特に今回乗る、北海道/東北新幹線の「はやぶさ」は全車座席指定なので、座席指定券がないと乗れない。(と僕はそのとき思っていた。)僕は普通の切符売り場の窓口に付き、第一章に書いた列車の座席指定のほかに、函館までの列車、鹿児島からの帰りの列車の座席指定券を依頼した。全部で八枚である。全部出してもらうのに二十分くらいかかった。ひとりで窓口を二十分も独占するって、ちょっとヒンシュクものだよね。後ろのおばちゃんの非難に満ちた視線に耐えながら僕は金を払わないで、切符だけ手にしてカウンターを離れた。

新函館北斗から東京までの「はやぶさ十号」は、全車指定席だが、全席埋まっているので指定券は発行できないということだった。ただ、それでも列車には乗れるという。歌舞伎の立見席ならず、「立席券」なるものがあり、

「デッキに立っているのなら乗ってもいいよ。」

ということだそうだ。しかし、指定席を取っても、遅れて乗れない人もいるだろうし。まして、途中で降りる人や乗る人が完全に同じ駅できれいに入れ替わるわけでもないので、実質的には座れると思ったし、実際そうであった。

十二月一日、よいよ「日本縦断」実行の日、五時半過ぎに僕は函館駅前のホテルを出た。氷点下五度ほどであろうか。北海道だけあってやはり寒い。昨日は午後四時に函館に着いて、夜景を見るためにロープウェーで函館山に登った。ダウンジャケット、マフラー、ジーンズの下にタイツ、毛糸の手袋の完全武装。それでちょうどよかった。函館の夜景は美しかった。しかし、展望台にいた人の八割以上は中国人。中国人観光客の波はここまで押し寄せていた。今日もタイツをはいている。新幹線の始発駅の新函館北斗駅は、函館駅から電車で二十分くらいの距離、函館市ではなく北斗市という町にある。ちょっとでも朝長く寝るために、僕は新函館北斗駅の周辺の宿をインターネットでサーチした。結果は、

「駅の他に何にもなかった。」

それで僕は函館駅の前に宿を取ったのだった。

前日の夕食は駅の近くの食堂で取った。夜景を見終わって、まだ七時半頃だったと思う。何と、その店の客は僕一人だった。熱燗と、シシャモと「ウニ、イクラ丼」を注文。誰もいないおかげで、食堂のおばちゃんと話ができた。今は、日本人にはシーズンオフで、函館に来るのは、中国人と韓国人の団体さんばかり。そんな人は、単独で食堂に食べに来ないので、今は街も、食堂も空いているとのことだった。それに、その夜は寒かったので、余り人々は出歩かないらしい。寒い夜、熱燗が美味しい。ウニとイクラも美味しかった。食堂から京都の母に、今函館にいるよと電話をする。

 

日本人だけではなく、中国人観光客にも大人気の函館山からの夜景。展望台で日本語が聞こえなかった。

 

<次へ> <戻る>