名選手必ずしも名監督にあらず

 

呂布(ピーター・ホー)、この美しい女性、貂蝉に焚きつけられて、義父の董卓を殺す。

 

シリーズ前半の登場人物の中で、代表選手は呂布であろう。ピーター・ホーという、米国出身の、ちょっとバタ臭い顔をした、イケメン俳優が演じている。彼は歌手でもあり、YouTubeで、彼の歌を聴くことができる。なかなか甘い声である。この呂布、

「とにかく強い!!!」

赤兎馬という、一日に千里を駆ける名馬を操り、敵が何十人、何百人かかって来ようが、バッタバッタと叩き潰してしまう。劉備と関羽と張飛が束になってかかっても、倒せなかった。

「人中に呂布あり、馬中に赤兎あり」

と、言い慣わされる、三国志唯一の武将。この人物、己の成功の為には親も売るという、ある意味で、行動パターンがぶれない人物。彼に当てはまる言葉は、

「名選手必ずしも名監督にあらず。」

だろうか。本人は滅茶苦茶強く、義父の董卓を倒すものの、リーダー、為政者としては問題が多く、最後は部下の裏切りで捕らえられてしまう。

 中盤のヒーローは劉備。先ほども書いたが、彼は、

「私は漢王室の末裔である。漢王室復興のために生涯を捧げる。」

というのが売り。かつては、ムシロを編む職人をしていた、苦労人である。「人としての道」、「仁義」を大切にする人物である。目先の利益の囚われず、あくまで「道理」、「人としての正しい行い」を貫き通そうとする。しかし、その正直さが祟って、なかなか事が運ばない。しかし、彼にはひとつ大きな才能があった。それは「人を見る目」である。

「劉備は、プロ野球のスカウトとして、成功をする。」

僕はそう信じる。彼は諸葛亮をくどき落とし、自らの軍師に迎える。それだけではない、彼は、張飛、関羽と義兄弟の契りを結び、その他、色々な人材を発掘する。そして、強力なスタッフのチームプレーで、ようやく、中国西南部に「蜀」の国を建国する。しかし、晩年、部下を信じず、独断専行し、墓穴を掘ってしまったことは、先に述べた通りである。

 中盤から、後半にかけてのスターは、諸葛亮である。彼は劉備から「三顧の礼」で迎えられ、軍師に就任してから、スーパースターぶりを遺憾なく発揮する。この人、いつも羽根でできた扇子を持っている。それが彼のトレードマーク。

 諸葛亮の笑ってしまうほど効果的な戦術の例をひとつ挙げておこう。彼は、「赤壁の戦い」で、孫権の呉と連合し、曹操の軍と戦うことになる。呉の司令官、周瑜は、

「矢が不足しているので、十万本の矢を、三日で調達するように。」

と、諸葛亮に命じる。そこで、彼が講じた作戦とは・・・彼は藁人形を乗せた船で、曹操軍に近づく。曹操軍は一斉に矢を放つ。諸葛亮は、藁人形に十分矢が命中したところで、船を引き返させる。そこに刺さっていた矢はちょうど十万本あったという。残念ながらこのエピソードは「三国演戯」の創作で、史実ではないらしい。

 

陸毅(ルー・イー)演じる諸葛亮。天才なのだが、全部自分でしようと思って最後は過労死してしまう。

 

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