三国志の魅力(その二)

 

劉備の三兄弟。左から張飛(康凱・カン・カイ)、劉備、関羽(于栄光・ユー・ロングァン)。三人とも最後は自らの失敗が原因で、不本意な死に方をする。

 

「三国」ドラマで興味深かったことの第三は、老害。

「人間、年を取ったらあきまへん。」

と言うこと。何せ、百年間の歴史を描いたストーリーなので、登場人物はどんどんと年を取って、死んでいき、新たな登場人物が現れる。多くの人間が年を取っていく様が描かれる。例えば、先にも書いた劉備なのであるが、若い時は謙虚な、思慮深い人物として描かれている。しかし、晩年、皇帝になってからは、己の力を過信し、部下の助言を聞かず暴走し、「蜀」の国を危機に陥れてしまう。彼だけではない、劉備の義兄弟、関羽と張飛も然り。年を経てから、それまでの性格がデフォルメされ、関羽は自信過剰、張飛は大酒と暴力がひどくなり、自ら墓穴を掘ってしまう。他の登場人物も、年老いた後での行動がとても興味深かった。

「彼らが、いい加減のところで、世代交代をしていたら。」

と考えてしまう。

 第四は、「ブレーン」の大切さである。英雄として功を成す人々、この物語では「魏の曹操」、「蜀の劉備」、「呉の孫権」などは、皆、極めて優秀な部下を持っていた。現代社会でも、成功する会社の経営者は、独断専行でなく、優秀な部下で構成されたサポートチームを持っていると思う。劉備の部下の諸亮葛(しょりょうかつ)、曹操の部下の司懿(しばい)など、彼らの働きなくして、主君の成功はあり得なかった。正に、よきブレーンを持った経営者こそが、真の成功者になれるのだ。組織の成功の秘訣は、「いかに優秀な人材を集められるか」ということなのだろう。

第五は、「兵站」、「ロジスティック」の大切さについて。ここ十数年来、「アマゾン」などのロジスティックを専門にする会社が抬頭してきている。また、「トヨタ」などは、もう何十年も前から、ロジスティック部門を重要なキーとして捉え、工場にジャストインタイムで原材料を供給するよう、色々な工夫をしてきている。戦争も然り、いくら最前線で兵隊たちが戦おうと思っても、武器と兵糧が供給されなければ、何もできない。この「三国」では、兵站を戦争において、最も重要な要素として取り上げている。

劉備の死後、蜀の政治を任された諸葛亮は、魏に攻め込み、もう少しで、首都攻略というところまで漕ぎつける。しかし、結局は兵站が伸びすぎ、兵糧や武器の供給に問題が出て、「勝っているのに撤退」を余儀なくされる。

ここまで読んでいただいて、お気づきだろうか。三国志で学んだことは、現代の社会でも、十分役に立つのだ。

「会社の社長が三国志を読んで、経営戦略、部下掌握法などを勉強した。」

という話をどこかで聞いたことがある。この物語の人気の秘密は、何と言っても、地域、時代を超えた教訓が、満載されていることなのだ。

 

曹操のブレーン、荀ケ(李建新・リー・ジェンシン)。常に主を立てながら適切な助言を行う。名専務というこころか。

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