ホッケンミー

 

まずは、サトウキビのジュースと鶏手羽で食事を始める。

 

八時ごろになり、三人で食事に行くことになった。場所は「チョムチョム」という「ホーカーセンター」である。

シンガポールでの最大の楽しみは食べること。私たちのふたりの娘は既に昨年お兄ちゃんをシンガポールに訪ねている。

「シンガポールでは食べ物が美味しかったよ。」

というのがふたりの共通した見解であった。三月に日本へ帰ったとき「地球の歩き方、シンガポール編」という旅行案内書を買ってきた。それを見ても、観光名所とかは殆ど書かれてなくて、どこで何が食べられるかという、「旨いものガイド」がほぼ全編を占めていた。娘たちも、旅行案内書も両方「お勧め」として触れているのが、ホーカーセンターである。ホーカーセンターは、いわば日本で一頃流行った「屋台村」と似ている。数十件の店が屋台を連ねたように並んであり、屋根があり、椅子とテーブルが並んでいる。屋根はあっても、壁はないので、もちろんエアコンはない。客は、それぞれの店から、各々好きなものを買って来て、真ん中のテーブルで食べるのだ。客はほとんど地元の人で、安くて美味しい。街の中や大きな建物の中に、このホーカーセンターのシステムを導入したのが、日本や英国にもある「フードモール」。ビジネス街にあるフードモールに昼行くと、いかにもビジネスマン、ビジネスウーマンという格好をした人々が、「ワンタンミー」(ワンタン麺)などをすすっている。

 その日僕たちが行くことにした「チョムチョム」というホーカーセンターまでは、タクシーで約三十分。三百人ぐらい座れる場所なのだが、土曜日の夜ということで超満員。ホーカーセンターで最初にやらなくてはいけないのは「場所の確保」なんだけど、それがままならない。やっと、詰めてもらって三人分の席を確保。妻と僕はまだ何をどう注文していいのか分からないので、ここは地元民の息子の「お任せ」にする。息子はまず、二リッターは入る巨大なジョッキに氷と一緒に入ったサトウキビの絞り汁を、飲み物として買ってきた。ストローが三本刺してあり、三人で回し飲みをする。少し緑色の液体で、実にあっさりしている。

その後、息子が三十軒ほどある店のあちこちで注文した料理が届く。「牡蠣のオムレツ」、「スティングレー(エイ)」、「鶏手羽のバーベキュー」、「ホッケンミー(福建麺)」、二種類の野菜の炒め物。息子のお勧めだけあって、どれも美味しい。シンガポールで食べる麺、第二弾の「ホッケンミー」は具沢山の焼きソバ。太くて平たい麺と、細くて丸い麺の二種類が混ざっていて、歯応えが絶妙。隣の若い男性ふたりが席を立ち、代わりに中国系の中年のご夫婦が横に座る。カリンとエリックという名前のそのカップルと、話をしながら食事をする。彼らは「チキンサテ」(ピーナッツバター味のタレのついた焼鳥)を注文し、

「美味しいから食べてみて。」

と薦めてくれる。地元の人と話すと、色々な「インサイダー情報」が聞けて楽しいものだ。

 

ホッケンミー。薄味だがコクがある。太い麺と細い麺が混ざっていて、歯応えが絶妙。

 

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