霧に包まれた朝

 

点心、この料理、何種類あるんでしょうね。大勢で食べると特に楽しい。

 

Day 7

「時差ボケが治らんなあ。」

今回、これには困った。年齢を重ねるにつれて、時差の調整に時間がかかるようになってきっていた。最近は、一時間の時差の調整に一日を要するペース。シンガポールと英国の時差は七時間だから、七日かかる計算。としても、ボチボチ時差ボケが取れていい頃。しかし、相変わらず、夜は眠れず、朝は起きられない。前日も、二時過ぎになっても眠れなかった。そうなると、最後は睡眠剤に頼ることになる。睡眠剤も、夜十時頃に飲むと、朝にはぬけているのだが、明け方に飲むと、起きてもモウロウとしてしまう。二時ごろというのは微妙なところ。しかし。僕は三時前に薬を飲んだ。しかも、多分一度飲んだのを覚えてなくて、二錠飲んでしまったようだ。

 案の定、翌日、日曜日の朝は、起きても、まだ薬が残っていて、半分眠っていて、半分起きているような状態。その日は、ハンさん夫妻のご招待で、オーチャードまで「ディム・サム(点心)」を食べにいく予定になっていた。しかし、その日の午前中のことは、霧に包まれたようで、余り覚えていない。写真を見て、そうそう、隣にエンゾーが居て、こんなものを食べたなと、後になって思い出した次第。昼過ぎにワタルのマンションに戻った僕は、彼の書斎で、二時間くらい、死んだように眠った。

 それでやっと目が覚めた。午後、ハンさん夫妻と僕たち夫婦でエンゾーを連れて、近くの公園に行く。

「マンゴーの木がある。」

とグオさん。見ると、普通の家の普通の庭にマンゴーがなっている。少し行くと、これも庭にバナナがなっている家があった。

「熱帯にいるんや。」

と実感する。祖父ちゃん祖母ちゃん四人で、孫を連れて散歩というのも、なかなか楽しい。北京語では、父方と母方では、祖父母の呼び方が違う。父方の祖父である僕は「イエイエ」(爷爷)、妻は「ナイナイ」(奶奶)、ハンさんは母方なので「ラオイエ」(姥)、グオさんは「ラオラオ」(姥姥)。呼び名に対して当該の人間が一人しかいないので、間違える心配がなくていい。

「将来、僕はエンゾーに『イエイエ』と呼ばれるんだろうな。」

ま、それもいいか。

 その夜、ワタルが、「銭湯」に連れて行ってくれた。「湯の森温泉」という銭湯が、マリーナ・ベイの近くにあるという。タクシーで行く。そこは、ショッピングセンターの中にあったが、ちょっと大きめの、ごく普通の銭湯。一時間ほどサウナに入ったり、湯に浸かったり、ワタルと背中の流し合いっこして過ごす。疲れが取れる。風呂から上がり、コンビニで缶ビールを買い、マリーナ・ベイの畔のベンチで飲む。夜景がきれい。今晩は良く眠れるかな。

 

祖父ちゃん祖母ちゃんに囲まれて楽しそうなエンゾー。

 

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