日中料理合戦

 

シンガポールにもあった「見ざる聞かざる言わざる」。ジュエル・ショッピングセンターで。

 

Day 5

五日目、昼前に、息子とエンゾーと一緒に、チャンギー空港に隣接した、「ジュエル」というショッピングセンターへ行く。初日に見た、「世界で一番高い人口の滝」がある場所である。そこで、昼食を取り、その後、滝の周りを一周する遊歩道を散歩する。エンゾーも手を引いてもらって、ご機嫌でトコトコ歩いている。シンガポールで「散歩する」と言うと、暑いこともあって、屋内になることが多いようだ。

シンガポールには九日間滞在したが、二日間は僕と妻が夕食を担当し、一日はゾーイの母親のグオさんが作り、二日間は息子が作った。残りの日は外食だった。五日目は、僕と妻が夕食を作ることになっていた。

「何食べたい?」

と息子夫婦に尋ねると、

「サムシング・ジャパニーズ!」

とのこと。それで、僕が煮物と青菜のお浸し、妻が白身魚のチリソース掛け、麻婆ナスを作ることになった。三時ごろから妻と二人で料理を始める。朝から特に蒸し暑かったが、午後になり雨が降りだす。ワタルとゾーイは、購入したマンションの改装のため、昼からインテリアデザイナーに相談に行っている。エンゾーはまだお昼寝。

 今回、僕たち夫婦が日本食を作り、グオさんが中国料理を作った。双方とも、かなり真剣に作り、「日中料理合戦」という様相。

「彼女も気合入ってるなあ。」

妻と顔を見合わせる。別の日だが、グオさんは三時間くらい台所に籠り、汗をかきながら作っていた。中華料理というと、脂っこいイメージだが、彼女の作った料理は、結構あっさりしていて日本人の口に合う。当然、中国風に盛り付けられており、中国式にいただくことになる。僕は、そこで、似ているようで異なる、日本式の食べ方と中国式の食べ方に気づいた。

 先ず、中国の箸は長くて先が尖ってない。先が太いので、細かいものがちょっと食べにくい。中国では、取り箸がないらしく、皆が大皿から「めいめい箸」で取って食べる。取り皿は小さいのが一つだけしかない。だから、違う料理を次々取ると、味が混ざってしまうが、中国人はあまりそれを気にしないようだ。料理ごとに小さな皿がズラリと並ぶ、日本料理とはかなり違う。その取り皿もない場合がよくあり、その際は飯をよそってある茶碗の上におかずを乗せて食べる。牛丼式の食べ方。また、食事中、水は飲まない。基本的に冷たい水は飲まないのが中国人。

また、外食した場合、中国人は「割り勘」を避ける。誰かがまとめて払う。払うことで自分のステータスを示すのだと言う。中国語の先生が、お勘定を前にした中国人を演じて見せたことがあったが、これが結構笑えた。大阪のおばさんたちが、伝票を取り合いしているような感じ。

「まあまあ、奥様、ここは私の顔を立てて、私に払わせてください・・・」

 

「でけた!」、今日は何品あるかな。

 

次へ 戻る