ンガポール車事情

 

久しぶりに顔を合わせた「祖父ちゃん祖母ちゃんズ」。

 

夕方、ゾーイの両親のハンさん、グオさんがやって来る。おふたりとも十カ月ぶりの再会。

「好久不」(お久しぶりです。)

ワタルとゾーイが結婚したとき、中国と日本の両方で披露宴があった。中国の披露宴のとき、初めて二人にお会いし、お二人が日本での披露宴に参加するため、日本に来られたとき、僕が京都を案内した。昨年はシンガポールで会っているし、時々メールを交換しているし、二組の祖父ちゃん祖母ちゃんたちは、まあいい関係を保っている。

 その日の夜の予定は、ワタル夫婦、僕たち夫婦、ハンさん夫婦の六人で、先ず一緒に飯を食い、その後、ゾーイがメンバーになっている「高級ワインクラブ」に向かうことになっていた。エンゾーを寝かせ、ナニーに任せてから、僕たちは二台の車でワタルのマンションを発ち、シンガポールの中心、オーチャードに向かう。僕と妻はハンさんの車に乗る。シンガポールでは、車を持つことに、メッチャ金がかかると聞いていた。

「シンガポールでは車が高いんでしょう?」

助手席の僕は、ハンさんに北京語で水を向ける。僕の北京語とハンさんの英語がほぼ同じレベルなので、とりあえず北京語で探りを入れ、通じなかったら英語で言い直し、ハンさんの英語力に期待するという作戦。

「車を持つにはライセンスが必要で、それが十万ドルくらいするんです。」

十万シンガポールドル、日本円にすると五百万円くらいかな。

「そして、そのライセンスの有効期限は十年なんです。その後、また買わないといけない。」

ヒエ〜!十年ごとに、五百万円が要る。シンガポールで車を持っているハンさんは、きっとお金持ちなんだ。

 後で調べてみたが、ハンさんの言っていた「ライセンス」とは、「車両所有権証書」という名前。一年に発行される枚数が限られ、入札制度になっているので、「定価」というものはない。今の相場は、ハンさんが言っていたように十万シンガポールドル、約五百万円辺りらしい。十年間有効、と言うことは、十年ごとに買い替えないといけない。そんなこんなで、日本では二百万円くらいの車が、シンガポールでは一千万円近くするとのこと。本当にお金持ちしか手が出ない。これは、狭い町の中、車で身動きが取れなくなるという事態を避けるための、シンガポール政府の政策だと言う。

ラーメンで夕食を取った後、最上階の「ワインクラブ」に行く。シンガポールの夜景が美しい。いい雰囲気。しかし、「お金の臭い」がする。ゾーイは最近このクラブのメンバーになったが、月々の会費を聞いて僕は驚く。確かに雰囲気は最高だけれど。その馬鹿高い会費にも関わらず、メンバーになるためには、何カ月もの待たなければならないという。ワタルがバルコニーから、ハンさんと僕に、辺りの説明をしてくれる。彼が現在住んでいるマンションは賃貸だが、最近、このオーチャードの近くに新しくマンションを買ったとのこと。その値段を聞いてびっくり。本当に、お金の感覚がマヒしてしまう。

 

背景の一角に、息子が買ったマンションの建物が見えるという。夜なので、見にくいが。

 

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