南十字星

 

夜、キヴ湖の湖面に漁火が見える。

 

 フイエのコーヒー隊員のYさんは農学部の出身だった。しかし、こちらのおふたりは、全くコーヒーとは別のことを勉強なさっていたとのこと。例えばMさんはタイ語の専攻だったという。ふとしたきっかけからタイでコーヒーに関わるようになり、その後抜けられなくなったということだ。Aさんはカナダやオーストラリアで働いておられたという。

コーヒーには「カッピング」というプロセスがある。「カッピング」とは「カップに入れる」、つまり、味を鑑定し、等級を付けるという過程である。その等級によって、コーヒーの価格が決まるという。

「『味覚』という相対的な、人によって異なるものに対して、絶対的な等級を付けるって可能なんですか?」

Mさんに聞いてみる。

「コーヒーには鑑定士という資格があって、その人たちは絶対的な基準を持っていると言われています。先生が色々なコーヒーを味あわせて、『これは一級』、『これは三級』というように教えるんです。自分も将来資格を取ろうかなって思ってます。」

ふ〜ん。「利き酒」ならぬ「利きコーヒー」の専門家がいるのである。ちなみに、日本酒と同じく、専門家はコーヒーを味わった後、飲み込まないで、ペッと吐き出すそうである。

九時半ごろにレストランから出る。空は満天の星。

「わあ、きれい!」

駐車場で、僕たち四人はしばし空を見上げる。ちょうど頭の上に夏の大三角がある。北斗七星が見たので、それを基準に北極星を探すと、地平線の下だった。天の川が頭上を縦に走っている。ヨーロッパでは見にくい「さそり座」もよく見える。

「あれが南十字星。」

Gさんが指を指す。確かに、十字架の形に四つの星が見えた。

「わあ、初めて見る南十字星。感激!」

僕が喜んでいるのは理解いただけると思うが、毎日見ているはずのふたりのお姉さんたちも、結構感激して見ておられた。

 ちなみにキヴ湖は、大地溝帯(Great Rift Valley)の一部である。この辺り、キヴ湖や、その南のタンガニーカ湖、マラウィ湖を始め、南北に長い湖が、縦に並んでいる。ウィキペディアによると、

「主にアフリカ大陸を南北に縦断する巨大な谷で、プレート境界の一つである。大地溝帯の谷は、幅三十から百キロメートル、総延長は七千キロメートルにのぼる。正断層で地面が割れ、落差百メートルを超える急な崖が随所にある。」

とのこと。「プレートの境界」、つまりここからプレートが湧き出して、東西に分かれて行っている。従って、将来は、ここでアフリカ大陸がふたつに分離するんだって。何とも規模の大きな、果てしなく長いスパンのお話。

 

大地溝帯の地図。深い谷に沿って、湖が並んでいるのが分かる。