ウーファー

これが「サイス」。死神スタイルだが、慣れると結構早く刈れる。

 

 ニュージーランドに滞在している間に、何度「ウーファー」という言葉を聞いただろうか。「Willing Workers On Organic Farms(有機農場で自主的に働く人々)」略して「WWOOF(ウーフ)」という組織があり、そこで働く人々が「WWOOFER(ウーファー)」と呼ばれる。例えば、ペーターの農場は「ウーフ」に登録されている。「ウーフ」のホームページでは彼が「ウーファー」を募っていることが載っている。ニュージーランドを旅する若者は、ホームページをチェック、彼と連絡を取り、もし双方の条件が合えば、若者は一定の期間ペーターの農場で働くことになる。基本的に無給、しかし、労働は一日に三時間か四時間程度、若者はその他の時間を観光などに充てることができる。つまり「宿と食事を提供する代わりに、半日の労働力を提供してもらう」という「ギブ・アンド・テイク」のシステムなのである。

ニュージーランドは日本やその他の先進国の若者に対して、「ワーキング・ホリデー」というヴィザを発行している。それで一年程度の滞在ができる。そのヴィザを持っている若者が、この「ウーフ」のシステムを使えば、宿と食事は保障されるので、結構長くニュージーランドに滞在することができるのだ。

実は、僕も、SさんとKさんの家にお世話になっている間、足手まといになるとは思いながらも、午前中は農場の仕事をさせてもらっていた。

「モト・ザ・ウーファー!」

難しいことはできないし、重労働に耐える体力もない。羊への水やりとか、草刈とか、そんな誰でも出来ることであったが。

「せっかく、ニュージーランドに来たのだから、もっとあちこち見て回れば?」

「そんなことやって、後で何の役に立つの?」

という意見もあった。しかし、基本的に「旅人」、「旅行の好きな人」というのは、「好奇心の塊」みたいなものである。僕もそれに当てはまる。何でも見たい、何でもやってみたい、それが将来役に立つか立たないかなんて、関係ないのである。「面白いと思ったこと」を、やってみたい。

 そして、草刈りは実際、面白かった。主にリンゴ園の草刈りを「担当」していた。収穫を前に、リンゴ園に人が入れるように雑草を刈らねばならない。木と木の間の広い部分は、Sさんがトラクターで刈る。しかし、リンゴの木の枝の下は機械が入れない。人手で刈らねばならない。最初僕は「エッジ・トリマー」、モーターの付いた回転鎌で刈っていた。しかし、余りにも効率が悪い。それで、「死神」が持っているような鎌「サイス」を使いだした。最初は、サイスをやたら振り回し、腰をやられた。しかし、そのうちに「コツ」、「楽に刈る方法」が見つかってくる。

「サイスを野球のバットに例えるなら、『引っ張る』とダメ、『流す』のが良い。」

「一本ずつ木の周りを買っていくより、一列を一度に刈った方が早い。」

そんな発見が面白い。誰もいないリンゴ農園で、サクッ、サクッと鎌を振るう時間は、僕にとって、「癒し」というか「瞑想、メディテーション」の時間だった。

 

収穫を前に、「タワワ」に実ったリンゴ。もちろん無農薬栽培である。

 

<次へ> <戻る>