カツカレー

 

これが「葉っぱ男」、「グリーンマン」、普通の人は絶対見逃してしまう。

 

三人で大聖堂の回廊を歩いているとき、ノリコが上を向いて何かを探している。

「何を捜してるの?」

と聞くと、

「グリーンマン。」

とのこと。それが何か分からないままに付いて行くと、ノリコが立ち止まって、

「あった。」

と言った。見ると、葉っぱに囲まれた男の顔が天井に彫られている。直径は三十センチくらい。この「葉っぱ男」、英国では、建物や庭によく登場し、「豊穣」、「再生」のシンボルであるという。でも、どうしてノリコはこの回廊における「葉っぱ男」の存在を知っていたのだろう。

ノリコはどこでも時間をかけて見るので、マコトと僕はいつも時間を持て余す。彼女を待っている間、大聖堂の中の礼拝用の長椅子に腰掛けてウトウトしている。教会の中は暖房が効いて眠気を誘う。

大聖堂を出て、駅に向かうことになった。途中商店街で、ノリコが「シークレットサンタ」のプレゼントを「チャリティーショップ」で買うのに付き合ってほしいという。英国に来て間がないマコトに「シークレットサンタ」と「チャリティーショップ」について説明をする。「シークレットサンタ」とは、日本で言う「交換プレゼント」、送り主が誰か分からないので「シークレット」なわけだ。「チャリティーショップ」とは、慈善団体が経営していて、人々から無料で寄付された衣服などを、安価に売る店だ。貧しい人々は(僕のような)、よくそんな店で着るものを買っている。ノリコのプレゼントは、ブタの形をした卓上塩胡椒ビンに決まったようだ。

十六時三十八分発、ケンブリッジ行きの列車に乗る。天気の良い一日だったが、辺りはすっかり暗くなり、気温が下がってきている。ケンブリッジで乗り換えるとき、寒くてホームに立っていられない。待合室で待つ。ノリコが熱い「チャイ」(牛乳で出した茶)を買って飲んでいる。

二時間半に渡る結構長い列車の旅だが、三人でいると話が弾んで、時間の経つのを忘れる。七時ごろにロンドンのキングス・クロス駅に到着。ロンドンでは雪が積もっていないし、幾分暖かいような気がする。

カレーとトンカツが仕込んであるので、三人でカツカレーを食べる予定。地下鉄で僕の家の近くまで来る。タクシーを捜すが、見つからず、バスで家に辿り着いた。

三人とも「キッチンドリンカー」をしながら、つまり台所でビールを飲みながら、カレーを温め、トンカツを揚げる。「遠足」はなかなか有意義だった。知らない場所を訪れるのはいつも楽しい。

ちょうど帰ってきた息子のワタルと四人でカツカレーを貪り食う。寒い日の終り、家の中の暖かさを有り難く感じた。

 

クリスマスの飾りつけがなされた商店街。今年もあとわずかだと感じる。

<了>