年越しそば

 

洋の東西を問わず・・・

 

ヨーロッパでも、日本の「民族大移動」のように大規模ではありませんが、「クリスマス」は家族を互いに訪問し合って過ごす伝統がありますよね。クリスマスの前、同僚に、クリスマスは何をするかを訪ねると、

「ヨークシャーの『イン・ロー(義理の両親)を訪ねる。」

「甥の家族がバーミンガムから泊まりに来る。」

そんなことを言っている同僚がいました。

 さて、家族が集まった。そこで、お母さんが料理の腕を振るうのに、洋の東西での違いはありません。英国でのクリスマス料理の定番は、ご存知のように、スタッフィングという詰め物をしたターキー(七面鳥)の丸焼き、ローストしたジャガイモ、ニンジン、ターニップ、メキャベツなどの野菜、それらにかけるグレービーソース。一見不気味なクリスマスプディング。スコーン。それにもちろん大量のアルコールでしょう。我が家では、七面鳥はどうもカスカスしているというのが不評。その代わりにダック(鴨)や、グース(ガチョウ)を焼いています。シャーロック・ホームズの小説を読みますと、盗人が宝石をガチョウの腹に隠したものの、クリスマスの前にそのガチョウが間違えて他人に売られ、食べた人が発見するというエピソードがありました。だから、ガチョウを食べるという習慣は、前世紀の初頭からあったものと思われます。

今年は、妻と末娘が、六キロのガチョウの腹にレモンとライムを入れて焼きました。レモンとライムの香りが脂っこさを中和して焼き方も絶妙でした。しかし、六人ではとても食べきれませんでした。身は解して、子供たちに持って帰ってもらい、骨は砕いて鍋にぶち込んでスープを作りました。そのスープはまだ、我が家の冷凍庫の中にあります。

代わって、日本のお正月の料理は「年越しそば」、「お雑煮」(おぞうに)、「おせち料理」でしょうか。

まず、「年越しそば」。「そば」は、褐色の、スパゲティーより少し細いパスタで、大晦日、ニュー・イヤーズ・イブの夜に食べます。一年を締めくくる食事ということになりますね。大晦日は「紅白歌合戦」を見て「年越しそば」を食べて、「除夜の鐘」を聞いて新年のカウントダウンをすると言うのが定番です。花火がドンパチ打ち上げられるヨーロッパに比べ静かなものです。

「紅白歌合戦」というのはNHKという英国ではBBCに当たる半国営放送が、もう何十年も続けている歌謡番組。その年、活躍した歌謡曲の歌手が選ばれて、「紅組」(あかぐみ)と呼ばれる女性チームと、「白組」と呼ばれる男性チームが交互に歌い、最後はどちらかが勝つという他愛もない番組。何年か前、スーザン・ボイルおばさんもゲストとして出ていたそうです。この番組が終わり、真夜中の直前から、日本中の全ての寺の鐘が鳴り出します。欧米の教会のベルの音のように高い音でははく「ボーン、ボーン」という低い音です。決まって百八回鳴らされます。仏教の教えによると、人間には百八の「煩悩」(よこしまな考え)があり、それを取り去るために同じ数だけ鐘が突かれるそうです。雪の夜に、静寂の中から聞こえて来る鐘の音を聞いていると、厳かな気分になります。

 

・・・年末年始は、美味しいものをお腹いっぱい食べる時。

 

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