イースターラビット

 

海鮮丼!正直、これは試してみたかった。

 

 Tさんの家に着く。大きなお家。豪邸と言ってよい。英語では「コンサーバトリー」というが、庭に張り出したガラス張りの部屋で、お茶を飲みながら話す。奥さんは外国の方なので、基本的に英語での会話。イースターなので、「イースターウサギ」と「イースター卵」を、一種のシャレなのだが、ロンドンで買ってお土産に持って来た。ウサギを庭に置き、卵を中に置く。そのうちに、近くにお住まいの息子さんが、奥さんと一緒に登場。五人で夕食をとりながら、話が弾む。息子さんと奥さんには、結婚記念に絵をプレゼント。美術館で若い女性が佇んでいる後ろ姿の絵。二日前に京都で描き終えたものだった。夕方から雨になり、コンサーバトリーのガラス屋根を打つ、雨の音が聞こえる。

 翌朝、起きると雲一つない青空が広がっていた。朝日の降り注ぐコンサーバトリーで朝食をとる。昨日僕が置いたイースターウサギが、庭からこちらを見ている。朝食後、Tさんは庭仕事を始めた。僕は、大網の街を「探索」してみることにした。日本の地方都市がどんなふうなのか、興味があったからだ。

大網白里市という町は、海岸部の白里地区と、内陸部の大網地区から成っている。九十九里浜があるのが白里地区、JRの「大網駅」があるのが、大網地区。僕は、大網の街を散策してみた。

「自然が多いなあ。」

と歩きだして思う。家から五分も行くと、既に水が引かれた水田が広がり、駅の向こう側は緑に覆われた丘陵地帯。昨日、東京の千葉の間で見た、「コンクリートジャングル」とはかけ離れている。駅の横を通ったとき、時刻表を見ると、何と十五分に一本電車がある。そして、東京駅まで特急でわずか四十五分。こんな便利なところに、こんな田園地帯が広がっているというのも信じ難い。それに、大きなスーパー、ドラッグストアもあり、買い物も便利そう。海に近いし、夏には海水浴もできる。良い所やん。

 僕は、一時間半ほど大網の街を歩いて、Tさんの家に戻った。そもそも、一時間半歩けば、全ての場所を網羅できるくらいの街の規模。Tさんは、家の前で、生け垣を切っていた。

「どうでした?」

「大網の街を熟知しました。もうどこへでも一人で行けます。」

でも、大網の地理を熟知したとしても、その知識を使うことがあるのだろうか。地球上のどこかで、大網に住んだことがある人に会って、「ローカルネタ」で盛り上がるなんてことが。Tさんはお家を数年前に買われたそうだが、その金額は、僕の想像していたものの半分くらいだった。結構お手頃で、住み易い場所なんだ。僕の千葉県に対する認識が改まった。

 その日の午後、僕は、大網を発って、昨日の逆のコースで京都に向かう。東京から先も良い天気。海側の指定席に座っていたので、丹那トンネルを抜ける頃に、窓側に移動する。期待通り、富士山が見えた。絶妙に雲が掛かっており、良い写真が撮れた。

 

帰りの新幹線の中から撮った富士山。雲のたなびき具合が絶妙。

 

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