ベルベット・イースター

 

京都市東北部クリーンセンター。ゴミ収集車の基地であるほか、持ち込みも出来る。

 

「ベルベット・イースター 小雨の朝 光るしずく 窓にいっぱい・・・」

僕は、松任谷由実の「ベルベット・イースター」を聴きながら運転していた。今日は、イースターの金曜日、「グッド・フライデー」である。そのFMラジオのDJをやっているのは、何と、松任谷由実さんご自身である。

「空がとっても低い〜 天使が降りて来そうなほど〜」

「確かに、今日はイースターやし、空がとっても低いわ。」

僕はつぶやく。窓の外は土砂降りの雨だった。車は京都産業大学の前を通過。

「ロマンチックな歌とはえらいちがいやなあ。」 

 車は、近くのレレンタカー屋で借りた「トヨタ・ヤリス」。助手席から倒した後部座席、トランクルームに至るまで、二人の母の家で乗せた不要物、つまり「ゴミ」がギッシリ積まれている。

「お母ちゃん、家の中にいろいろ要らんもんがあるやろ。車でリサイクリングセンターまで運ぶから、何を捨てるか考えといとくれへん?」

今回、京都に帰ったとき、母たちの家の不要物を処分しようと、出発前から考えていたのだった。京都に着いた一週間後を「Xデー」と決める。一週間で、母たちは、家の中の不要な物を集めておいてくれた。

金曜日朝起きると激しい雨。京都に着いてから、ずっと天気が良かったのに。雨の中、レンタカーを取りに行く。雨の中、二人の母の家のまで荷物を積み込み、京都市の北、大原に行く道にある「東北部クリーンセンター」に向かう。

クリーンセンターでは、着いた時に荷物を積んだまま車の重量を量り、出るときにまた車を量る。そして、その差に対する料金を払うのである。職員の人たちはとても親切で、荷物を降ろすのも手伝ってくれた。三往復くらいしなければいけないかなと思ったけど、二往復で済んだ。

 母の家で荷物を整理していると、色々な物が見つかる。面白かったのは、自分が、高校生の時に描いた絵だった。

「なかなか上手いやん。」

自分で自分の絵を見て感心してしまうのだ。当時の絵を見ると、

「楽をしないで、自分の作品と精一杯向き合っている。」

と感じる。絵だけではない。僕は色々文章も書いているが、十七歳の時に書いた物を越えることができないと思うことがある。

「この五十年間で、自分はどんな進歩、上達してきたんやろ。楽をすることばっかり覚えたんとちがうかなあ。」

と考え込んでしまう。自分が十代の時に描いた絵が、今の自分を𠮟咤激励してくれる。それも、いいことかも。

 

高校生の時の描いた絵。真剣に描いている。モデルは同級生の妹さん。

 

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