方向転換は難しい

 

市役所前で辻回しを終え、45分遅れで、通り過ぎる長刀鉾。この後、十数基の鉾と山が続く。

 

宵々山の鉾町界隈、昼間とは違い沢山の人が出ている。室町通や新町通は車両通行止めで、歩行者も一方通行になっている。また、四条通や烏丸通も「ホコ天」になっており、四条通は真ん中に柵が設けられ、それぞれの側で一方通行、烏丸通では、普段車の走っている場所に屋台が並び、それぞれの屋台に大勢の人が群がっている。皆、二年間のブランクを取り戻そうとしているように見える。メインストリートを完全に通行止めにする、それだけで、祭りのスケールが分かる。浴衣姿の女性が多く、目を楽しませてくれるが、皆マスクをしているのがちょっと残念。夜の街に提灯に彩られた山や鉾が浮かび上がり、なかなか幻想的な風景であった。

 宵山の夜は、マンションで過ごす。オンラインで学校の研修会があったから。(英国は昼間なのである。)また、宵々山の日であれほどの人出、今日「追って知るべし」である。

山鉾巡行の日。従姉妹のSちゃんと彼女のご主人のKさんと、京都市役所前で待ち合わせ、御池通で行列を見ることになっていた。朝九時半ごろにマンションを出発、御池通に出る。セミの鳴き声がうるさいくらい。京都の道としては異例に広い御池通は、両側が並木道。セミの声も格段に大きい。道の両側には、一車線をつぶして、観覧席が設けられている。日差しは強いが、気温はそれほど高くない。風もあり、外で見物するには、絶好の天気と言える。

十時におふたりと会い。そのまま、寺町御池の交差点で、巡行を見ることにした。祭りの運航計画によると、最初の長刀鉾が京都市役所前で、方向転換をするのは、十時二十分となっている。しかし、長刀鉾が交差点に姿を現したのは十時四十五分ごろだった。

「やっぱ、三年ぶりで、引っ張る人も慣れてないんやろね。」

Kさん。そのうち、見物人の一人が倒れ、救急車が来て、そのお姉さんを収容していたので、その間、行列はストップ。方向転換を終え、長刀鉾が目の前を通過したのは十一時頃だった。

鉾の方向転換、これを「辻回し」と言い、巡行の大きなアトラクションになっている。鉾の車輪は回転しない。それで、角で九十度回るときは大変。車輪の下に割った竹を差し込み、摩擦を少なくするために水が撒かれ、五十人以上の引手が、絶妙の角度から鉾を引っ張り、鉾を回転させる。通常、三十度くらいずつ、三回くらいの動きを繰り返し、鉾は九十度の回転を終える。これを見るために、「辻回し」の行われる場所では、特に見物人が多く、それだけ人垣も厚い。僕は、帰り道、放下鉾が、御池通から新町通りに入って行くのを間近に見ることが出来た。なかなか迫力。一見に値する。真っすく生きている人の、方向転換は難しいということ。

行列をほぼ見終わった後、僕たち三人は、地下鉄に乗り、山科のお好み焼き屋へ。そこで、モダン焼を食べながら昼からビールを飲んだ。例年より涼しいとは言え、炎天下で何時間か過ごした後飲む冷たい生ビールは最高。

 

屋根の人は、バランスを取るのに重要な働きをすると言う。屋根の下は囃子方。

 

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