カメラがない!

 

関空から京都までの特急「はるか」はハローキティ列車

 

関西空港から出て、京都行の電車に乗る。前にも書いたが、ロンドンからパリまでへの飛行機が遅れ、僕はギリギリで何とか乗り継ぎに間に合った。しかし、荷物は乗らなかった。関空に到着した時点で、

「カワイさん、荷物は乗っていません、後でお宅にお送りします。」

と、あっさりと言われた。着替えは、母の家に少しはあり、「着た切り雀」になることはない。一番の問題は、一眼レフのカメラが、預けたスーツケースの中に入っていることだった。当面は、携帯で写真を撮ることになりそう。

「一眼レフ以外はカメラじゃない。」

と思っている僕にとっては、ちょっと困った状態。

「ま、最近の携帯のカメラも悪くないから。」

と自分を慰める。祇園祭の写真を撮るのを楽しみにしていたので、一日も早い到着が望まれる。僕は木曜日に着いたが、荷物が届くのは「早くて土曜日」とのこと。宵山が土曜日、巡行が日曜日なので、微妙である。

関空から京都までの電車は、「ハローキティ列車」。車体にキティちゃんが描かれている他、椅子のカバーにもキティちゃんがいる。京都に到着。

「おっ。結構涼しいやん。」

僕は少し安心する。確かに湿度は高いが、気温は三十度を超えていないと思う。昨年クリスマスにシンガポールを訪れたときと同じような感じ。四条大宮の不動産屋で鍵を受け取り、烏丸御池のマンションに入る。「マンション」という言葉を使うのは、英国の本当の「マンション」(大邸宅)を知っている僕には抵抗があるのだが、今回は日本での通称に従い、僕の住んでいた「コンド」、「フラット」をマンションと呼ばせていただく。

手荷物だけで、着替えがないので、二条城前からバスに乗り、母の家に行く。着る物を取り、帰りは自転車。小雨が降っているが、顔に当たる雨が心地よい。スーパーに寄って、鯖寿司やビールを買い、夕食を取った後、二十四時間ぶりに横になって眠る。

翌日は、介護保険の銀行振替手続き、マイナンバーカードの受け取り、金沢へ行くときの切符の手配など、事務仕事をして午前中が過ぎる。外に出る際、マスクを忘れて、慌てて取りに帰ることが何度も。英国では、マスクを着けている人は殆どいない。僕自身、英国ではコロナ感染については、何の対策もしていない。ワクチンを三回接種したことも大きいが、それ以上に、自分が二月に感染したというのも大きい。半年前にオミクロン株で感染しているんだから、まだ十分強固な抗体を持っているはず。だから自分は感染しないという論理。混んだバスに乗り込むとき、バスのステップに足が掛かるまでは前の人を押すが、一旦バスに乗ってしまうと、後ろの人を押すという心理に似ているかも。僕はもう「バスに乗っている」から。この説明で、分かってもらえるだろうか。

 

黄昏の四条通、提灯を点けた鉾が浮かび上がる。

 

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