ナイターの日本シリーズ

焼き肉レストランで、妹夫婦と義父。皆、飲む量がグッと減りました

 

金沢に着いた夜、義父母と妹夫婦、その子供達とで焼肉を食いに行った。これは僕が金沢に行ったときにかなり恒例になっている行事だ。義弟も酒が強い。ふたりとも若い頃は、ビールの大ジョッキを三杯飲んだ後、日本酒を二合徳利で数本空け、その後帰って実家でウィスキーを飲むなんて滅茶をしたが、最近はふたりとも歳なので、ぐっと大人しくなってしまった。

今回も、大人しく、ふたりで仲良く中ジョッキ三杯ずつくらいを飲んでいた。義弟の家はタケノコ農家なので、今年の作柄の話なんかを聞きながら、焼肉をつつく。ひとしきり腹も膨れた八時半ごろ、甥っ子の一人が、

「日本シリーズどうなっとるやろ。早く帰って見んと。」

と言い出した。そうだ、日本では今、日本シリーズをやってたんだ。今日は第六戦のはず。

それで、焼肉レストランから急いで実家に戻り、義父、義弟、甥っ子、僕は今の畳の上に寝転がって野球中継を見た。義父の野球大好きは有名で、朝は大リーグ、昼は高校野球、夜は日本のプロ野球と、夏など一日中野球漬けの日々を送っている。石川県の人なので、もちろん松井選手の大ファン。

英国にいると、普段野球中継は見られないので、結構新鮮だ。中日もソフトバンクも特に好きなチームでもないが、その方が楽な気分で見ることができる。どちらか真剣に応援していると、見ていて胸が苦しくなるもの。

 しかし、日本シリーズをナイターで見るのは、何か変な気がする。もちろん、ドーム球場なので、夜に試合をやっても、全然問題はないのだろうが。僕の子供の頃は、日本シリーズは皆昼間の試合だった。当時はまだそれほど色々なスポーツがテレビで放映されていなかった。野球、相撲、プロレスくらいか。それで、皆が結構日本シリーズの結果に興味を持っていた時代だった。

 昼間の試合なので、当然学校へ行っている僕等は見られない。それでもやはり試合経過は気になる。そんなとき、必ずクラスにひとり、先生に隠れて、トランジスターラジオで野球中継を聴いている奴がいた。

「広島、七回二点、逆転、三対二」

なんて書いた小さな紙が回ってくる。男子生徒の間から、

「おおっ」

という歓声が湧く。自分が面白いことを言ったつもりないのに湧く歓声を聞いた先生。そこは心得たもの。

「おい、源田。」

「はい。」

「今、何対何や?」

そんな時代だった。

 

日本シリーズを見る。やっぱり野球中継は畳みの上に寝転んで見ないと。

 

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