ヴァレンタイン・デー

 

ライト駅でドルトムント行きの急行を待つ人たち

 

ギリギリかと思ってヴッペルタール中央駅の階段を駆け上がると、ベルリンからのICE(ドイツの新幹線列車)が故障なのかホームで立ち往生していた。二十分後、そのICEがホームを去ると、やっと僕の乗るアーヘン行きの列車がやってきた。列車の中で、今日の出来事を日記に書きながら、

「十年ぶりに誰かに会うって、とても面白いシチュエーションだな。」

そんなこと考えていた。 

 月曜日、新しい週が始まった。僕は精神的な疲れが溜まると、眠りが浅くなるタチである。月曜日の朝は三時半に目が覚め、その後眠れない。かなり疲れてきているのが分かるが、先週のようにポジティブに考え、眠れなくても気にしないことにする。最近ミーティングが多かった。これも疲れる原因。プログラムを弄っている方が、人間を相手にしているより気が楽だ。

 昼休み、インスタントラーメンに買ってきたもやしを入れて食べる。

「モトの『ヌーデルズッペ』(ヌードルスープ)もだんだん本格的になるわね。」

カロラとブリギッテがそれを見て言った。

 今日はヴァレンタイン・デー。ヨーロッパでは、女性が男性に贈り物をするという習慣はなく、どちらがどちらに贈り物をしてもよいことになっている。マユミから

「ハッピー・ヴァレンタインズ・デイ!」(英語だと「ズ」が入る。)

というメールが届く。返事を打つ。ヨハンには昨日のお礼のメールを入れる。すぐに返事が来た。

 今日も会社を出るのが七時前になった。雨が降っている。会社帰りにイタリアレストランに寄る。ひとつのテーブルだけ、赤いテーブルクロスが掛けてあり、その上に薔薇の花びらが散らされており、「予約席」と書いた札が立っている。ビールを飲みながらサラダを食っていると、三十歳くらいのカップルが入ってきてその席に就いた。ふたりは赤ワインをボトルで注文し、乾杯をし、キスをしている。今日はヴァレンタイン・デーだったと、そのときまた思い出す。今日はどのレストランでも、こんな光景が見られるのだろう。

 火曜日。朝、水溜りに靴と靴下を濡らしながらの散歩。疲れていても、散歩と補強運動の日課をこなす自分をちょっと偉いと思う。雨は止んだが、厚い雲が一日空を覆っている。昼から、ロンドンの同僚、アツヨとマコトがオフィスに顔を出す。別の仕事で三日ほどドイツに出張しているとのこと。

「モトってすっかりここに融けこんでいて、違和感が全然ないわね。」

とアツヨに言われる。

 今日はデートレフの家で夕食をご馳走になることになっている。彼は息子さんの新しい学校を見に行くというので早めに帰って行った。帰り際に彼は言った。

「六時に待っているからね。」

 

車窓より。メンヒェングラードバッハ中央駅。