息子の初月給

 

二月の息子の誕生日、まずヴェトナム・レストランで昼飯を食って・・・

 

二月二十八日の夜、僕は息子のワタルと、ファリンドン駅の近くの、ハンバーガーレストランにいた。ワタルによると、ロンドンのレストランの人気投票で、いつも上位にランクされる、結構有名な店だという。なかなかポッシュな店、う〜ん、ハンバーガーの店と言っても侮り難いのだ。息子の職場はファリンドン駅の近く。彼の仕事が終わってから駅で待ち合わせて、二人で夕食に出かけた。バーガーとビールとフライドポテトを食べると、結構腹が膨れる。

「明日も早いから、ボチボチ帰ろう。」

九時過ぎに勘定を済ませて店を出る。何と、息子が払ってくれた。二月から働き始めた息子は、前日初めての給料を貰ったところ。有難く奢ってもらうことにする。息子に奢ってもらうなんて、生まれて初めて。正直嬉しい。勘定を取りに来たウェートレスに、

「昨日息子の初月給が出て、生まれて初めて息子に奢ってもらうんですよ。」

と言ってしまう。彼には、大学、大学院とかなり「投資」をした。バーガーの代金くらいでは、「回収」できないのだが、まずは気持ちだけ、受け取っておくことにしよう。

レストランを出る。明日も仕事だし早く帰って寝ようっと。ファリンドンの駅の改札を入り、BR(英国のJR)に乗る僕は地下鉄に乗る息子と別れる。別れ際、息子が案内板を見て、

「パパの乗るルートン行の電車、次のだからね。」

と言う。ファリンドン駅からは快速と各駅停車があり、ルートン行の各駅停車に乗らないと、僕の降りるミル・ヒルの駅には停まらない。来客の中には、間違えて快速に乗ってしまい、

「降ろしてくれ〜」

と言いながらミル・ヒルを通過し、次の停車駅のセント・オーバンスまで行ってしまった人が何人もいる。

ホームを歩いていると、向こう側のホーム、つまり、僕の乗るホームに電車が入ってきた。僕の乗る、ルートン行の各駅停車だ。

「あれに乗り遅れると、寒いホームで三十分待たなければならない。」

僕は反射的に駆け出し、向こう側のホームに通じる階段を全速力で駆け上がった。電車には何とか間に合った。しかし、左の胸に痛みが走った。僕は電車の椅子に倒れこみ、その胸の痛みに耐えた。

帰って布団に入っても、胸の痛みは治まらない。痛みが肩から上腕に広がってきているような気がする。眠れない。三時過ぎ、会社の上司に、明日は行けないとメールを入れる。

翌朝八時、僕は妻の運転でGP(家庭医)へ行った。幸い、八時半に僕の主治医のドクター・カッテルの予約が取れた。カッテル医師は僕の話を聞いたあと、

「狭心症の恐れがあるから、これから直ぐに救急車で総合病院に行ってください。」

と言う。ある程度予想していたこと。僕は十五分後、救急車でバーネット総合病院へ運ばれた。その日の午後、救急病棟から循環器科の病棟に移され、僕は四日間入院した。

 

・・・夜にケーキを食べた。