「ノルウェー人の客」

ドイツ語題:Der norwegische Gast

原題:1222

(2007)

 

 

アンネ・ホルト

Anne Holt

 

 

<はじめに>

 

雪に振り込められ、孤立した環境の中での殺人事件。犯人は内部にいるという設定、アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」を思い出す。列車事故のため、近くのホテルに避難した乗客がひとり、またひとりと、死んでいく・・・

 

<ストーリー>

 

風力ゼロ。山間部における効果。無風、風速時速一キロ以下。雪は垂直に、あるいは振り子のような動きをして落ちる。

 

二六九人の乗員と乗客を乗せてオスロからベルゲンへ向かっている列車が、山岳地帯で脱線する。原因は降り続く雪と思われた。先頭車はトンネルの入り口に激突して運転手は死亡。その他の車両は雪の壁に突っ込んだため、怪我人は出たが、乗客に死者は出なかった。 元刑事のハンネ・ヴィルヘルムソンはその列車に乗っていた。彼女は、捜査中に背骨を撃たれて下半身が麻痺したために警察を辞め、車椅子での生活を余儀なくされている。雪の中でほぼ横転した列車に、スノーモービルに乗った男たちが救助にやって来る。救助の男はハンネを見て驚く。スキーのストックが、太腿に突き刺さっていたのだ。下半身に感覚のないハンネはそれに気づいていなかった。彼女は間もなく気を失う。救助の男たちは、乗客をスノーモービルで、近くのホテルとアパートメントに運ぶ。

ハンネが目を覚ますとホテル「フィンセ、一二二二」のロビーにいた。周囲では怪我をした乗客たちが、医者の手当てを受けていた。幸い、列車の中に学会へ向かう医者のグループがいたので、怪我人の手当ては順調だった。ハンネをホテルに運んだのは、ゲイア・ルグホルメンという男だった。彼は、近くに住む弁護士であった。ハンネはマグヌス・ストレングという医者に手当てを受ける。ゲイアは医者に命令されて、激しいが雪の中、ハンネの車椅子を列車まで取りに行く。天候は一段と厳しいものになり、気温はマイナス二十度以上に下がり、雪と風も激しさを増す。ハンネは乗客が駅の近くにある数件のアパートメントと、このホテルに分かれて収容されていることを知る。駅まではほんの数百メートルであったが、この天候の中で、移動するのはほぼ不可能に近かった。

乗客の一人の、ベルゲンのサッカーチームのマフラーをした男が机の上に乗って話し出す。カト・ハマーという牧師であった。

「この事故で命を落とした列車の運転手と、その家族のために祈りを捧げよう。」

とカトは話し出す。しかし、その言葉を遮るように、ヤジを飛ばす者がいた。それは十五歳前後の少年であった。ハンネは列車の中で、その少年と一緒のコンパートメントにいた。ハンネはその少年アドリアンが施設から脱走したことを見抜き、それを公表すると言って、少年を黙らせる。

 

風力一、かすかな空気の動き。風速は毎時一から五キロメートル。風を肌で感じることはない。雪はわずかに風に流される。

 

ハンネは、オスロの駅で、列車の最後尾に、警察の護衛付きの特別列車が連結されるのを見ていた。彼女は、ノルウェー王室の一員が、その車両に乗っているのではないかと考えていた。しかし、ホテルにそれらしい人物と、護衛が滞在しているという様子はなかった。乗客の中に、カリ・トゥーレという女性牧師がいた。カリは、テレビにもよく出演する、有名人であった。彼女はクルド人の夫婦の、妻の方に話しかける。夫がそれを遮り、辺りには険悪な空気が流れる。

ハンネと医師マグヌスは、救助に当たっているゲイアに、ふたつのことを尋ねる。ひとつは、列車の中に王室の一員が泊まっていたというのは本当かと言う点、もうひとつは、本格的な救助は何時来るからという点であった。ゲイアは最初の質問を一笑に付す。ふたつ目の質問に対しては、天候を考えると、二、三日間は乗客たちがこの場所を出られる可能性はないと答える。そして、このホテルは完全に孤立はしているが、十分な食料と燃料があり、乗客たちの受け入れには困らない旨を伝える。ハンネは、最後尾の車両に乗っていたのが誰であるか、またその人物がどのようにして救助され、どこへ運ばれたのかという点に、思いを巡らせる。

 

風力二、弱い風、風速は毎時六から十一メートル、寒さの中では空気の動きを感じる。雪は垂直方向よりも水平方向に動く。

 

ハンネの調べたところによると、その夜ホテルに滞在している人間は、従業員、泊り客、救助された列車の乗客を合わせて百九十六人であった。ハンネはロビーに停めた車椅子の上で眠ってしまう、ハンネはゲイアに起こされる。

「あなたは警察の人間でしょう。」

とゲイアが尋ねる。

「昔は警察にいたけれど、ずっと前の話。」

とハンネは答える。ゲイアは、建物の外に死体が見つかったと話す。その死体は、調理場に運ばれていた。それは前日演説を始めたサッカー好きの牧師、カト・ハマーのものであった。カトは、至近距離から顔を銃で撃たれていた。死体を発見したのは、ホテルの女性支配人であるベリット・トヴェレであった。ハンネと、一緒に呼ばれた医師のストレングは、カトの死体の体温や、雪のかぶり具合から、カトが何時殺されたかを探ろうとする。医師のマグヌスは、殺されたカトを、前から知っているようであった。

 その時、大音響がして、調理場の窓ガラスが割れ、雪が流れ込む。ベリットは、その窓が以前から調子が悪く、雪と嵐のために割れたのだと説明する。

 ハンネは誰かがカトのいないことに気付くと考える。ハンネはアドリアンに、カトが殺されたことを告げる。誰かが拳銃を持って、列車から降りたと考えるハンネは、最初に救助されたアドリアンに、どの乗客が何を持っていたかのリストを作ることを頼む。アドリアンは、驚くべき正確さでそのリストを仕上げる。

 

風力三、弱風、風速は毎時十二から十九メートル、風ははっきりと感じられ、不快に思われる。雪はほぼ水平方向に動く。

 

朝になり、乗客たちが、ロビーに降りて来る。一晩中、ポーカーをしていた女子ハンドボールチームの少女が、夜遅く三時ごろに、カトが雪の小降りになったのを見計らって、外出したと言う。朝食に皆が集まったころ、ふたりの若者が、

「拳銃を持った男がいる。」

と、騒ぎながら二階から降りて来る。ホールは騒然となり、その騒ぎの中、エリアス・グラーヴという名の男性が、心臓麻痺で倒れる。彼はその場で死亡していた。ゲイアがテーブルの上に立って、皆を鎮める。ハンネはその騒ぎの中で、クルド人の夫婦が、拳銃を抜いたのを見る。それに気付いたのはハンネだけのようだった。

 ハンネはゲイアから、三階に武装した護衛が立っていることを知る。ハンネは、ホテルの支配人ベリットに、二階にいる客について尋ねる。ベリットはハンネを別室に呼んで説明をする。列車が脱線する音が聞こえた直後、誰かから電話があり、その人物が、最後尾の車両の乗客を最初に救助するように要請したという。最後尾の車両には、スノーモービルが積まれていたらしく、その乗客は自力でホテルに到着し、三階の部屋に入ったという。ハンネが、電話の主の電話番号を調べて電話をかける。ハンネにはその声に聞き覚えがあった、それはノルウェーの外務大臣のものであった。ゲイアも救助の際、その最後尾のふたりの乗客に会っていた。その一人はノルウェー人であったが、残りの三人は顔を隠していて、男か女かも分からなかったという。

 カトが殺されたことを、ハンネは乗客に知らせずにおいた。ロアー・ハンソンという男が、ハンネに話しかける。彼も牧師だという。ロアーは、カトは死んだのかと尋ねる。ハンネが答えないでいると更に、彼は、カトが殺されたのかと尋ねる。しかし、それ以上の会話はアドリアンによって打ち切られる。

ハンドボールチームの少女が、調理場の冷凍庫の中に隠してあった、カトの射殺された死体を見つけてしまう。そして、カトが拳銃で撃たれたことが乗客たちに間に知れ渡ってしまう。それはとりも直さず、殺人者が乗客の中におり、その殺人者と一つ屋根の下で、寝泊りしているということであった。ハンネはゲイアと三階の部屋に泊まっている客、列車の最後尾に乗っていた客が誰か、推理する。外務大臣まで関与して、その素性が知れることを防ごうとしている人物というのは一体誰なのだろうか。

 

風力四、かなり強い風。時速二十から二十八キロ。気温が低いと、風の影響を受ける。風の抵抗を感じる。雪が舞い、視界を遮り、肌に不快感を与える。

 

その日の午後、ウトウトしているハンネに話しかける人物がいる。またロアー・ハンソンであった。殺されたカトと同じく聖職者のロアーは、殺されたカトとは学校の同僚で、同じ組織で働いていたこともあるという。彼は、カトを殺した人物を知っているという。

「マルガリータが、復讐が・・・」

ロアーがまさにそのことに触れようとした瞬間、今回もロアーと仲の悪いアドリアンが現れ、ロアーは核心を話さないまま去っていく。

カリ・トゥーレは、乗客を、安全なグループと、安全でないグループのふたつに分け、そのグループ分けを、自分と数人の乗客にやらせるように要求する。ゲイアが何事かを言って、カリを黙らせるカリは、しぶしぶ、ホテル支配人のベリットに対策を任せることを承知する。

再び、大音響とともに、壁が破れ、冷気がホテルに流れ込む。ホテルの上に停まっていた列車の車両が、雪崩と共に落下し、ホテルに突っ込んだのであった。料理人のヨハンが、スノーモービルで村人に助けを求めに行き、彼らの助けで、ホテルの壁に応急修理が施される。

 

風力五、強い風。時速二十九から三十八メートル。向かい風にスキーをするのはほぼ不可能。雪が視界を妨げる。雪が鞭打つように顔に当たる。

 

応急修理のおかげで、ホテル内の温度は再び上昇する。ハンネは、ゲイアから、外の様子を聞く。夕食の後、ホテルに着いて以来、ずっとラップトップで何かをしていたビジネスマン風の男が、料理人のヨハンに話しかける。自分をここから脱出させてくれたら、百万クローネを払うと言う。その男は、シュタイナー・アースという、これまで何度もマスコミを賑わした、投資家であった。彼はこれまで、何度も法律に触れるか触れないというギリギリの取引を行っていたが、起訴されたことはなかった。ヨハンは相手にしない。クルド人の夫婦が、ベリットに、自分たちだけ駅前のアパートメントに移らせてもらえないかと頼む。ベリットは、天候が悪いため、ホテルから客は外に出せないと言って断る。

アドリアンはヴェロニカという名前の若い女性と仲良くなったようであった。彼はそれどころが彼女に恋したように見えた。ヴェロニカは、アドリアンの赤いソックスを履き、アドリアンはヴェロニカのセーターを着ていた。

「着るものを交換するなんて、子供じみたことをする。」

ハンネは不思議に思う。

 

風力六、強風。時速三十九−四十九キロメートル。風に向って立っていることが難しい。地吹雪が視界を一キロ以内に狭める。顔を風に晒していると痛みを感じる。山歩きは危険である。

 

ハンネは、ロビーのベッドで眠っていた。深夜ベリットがハンネを起こす。

「ロアー・ハンセンが行方不明になった。」

とベリットはハンネに告げる。そこにはゲイアもいた。ロアーと同じ部屋に寝ていたセバスティアン・ロベックという男が、深夜になってもロアーが戻らないと言っているという。ロアーはセバスティアンに

「少しの間、人に会いに行く。」

と言って部屋を出たまま、深夜になっても戻っていないという。ゲイア、ベリットは明朝、ロアーの捜索を開始することにする。

 

風力七、極めて強い風。時速五十から六十一キロメートル。身体を屈めないと向かい風の中を薦めない。杖がいる。視界は百メートル。スキーでも進むことは困難になる。

 

翌朝、ベリット、ゲイア、ハンネによるロアーの捜索が始まる。ハンネは地下室で倒れているロアーを発見する。その部屋は乗客の犬に割り当てられた部屋で、獰猛なピット・ブルが居た。そのプットブルも大怪我を負っていて、ハンネの足元で息絶える。マグヌス医師は、死体が何か鋭い銛のような物で刺し殺されていることを発見し、おそらく、鋭く尖ったツララが使用されたのではないかと推理する。ゲイアは、ツララが折られた痕跡がないかを捜しに行く。また、犯人はどのようにして獰猛な犬を宥めたのかも謎であった。

 

風力八、嵐のような風、時速六十二から七十四キロメートル、木の枝が強風で折れ始める。地吹雪に包まれ、視界が遮られ、正しい方向に進むことが難しい。屋内に留まることが望まれる。

 

ハンネは久しぶりにシャワーを浴び、自分がどれだけ汚れていて、体臭を発していたかを知る。ベリットはハンネに着替えを与える。フィンセホテルの住人は百十七人に減っていた。シャワーを浴びたハンネがベリットと一緒にいるところに、ゲイアが息を切らしてかけつけて来る。シュタイナー・アースが雪の中に倒れているという。ハンネとベリットが駆けつけると、窓の下にシュタイナーが倒れていて、既に息絶えていた。シュタイナーは、感想室にあったスキーウェアやブーツを身に付け、ホテルから脱出を図り凍死したものと思われた。

 

風力九、嵐、時速七十五から八十八キロメートル。山での行動は不可能。雪穴か、小屋への非難が必要となる。

 

ハンネは、関係者の名前をフリップチャートに書く。そして、システマティックに考えることを自分に課す。短い時間に閉ざされた場所で起こったふたつの殺人は、同一の犯人によるものであることが明確だった。なぜ、犯人は最初カトを拳銃で射殺しながら、何故ロアーの殺害に拳銃を使わなかったのか。カトとロアーはふたりとも聖職者であり、昔からの友達のようであった。ロアーはカトの過去について何かを知っていて、それがカトが殺された原因であることも知っていた。それは何なのか。また、ハンネだけが、クルド人の夫婦が拳銃を所持していることを知っていた。まず、彼らを疑うのが自然のようにも思われた。

そのとき、長身の男がロビーに入ってくる。彼は、三階のアパートメントをあてがわれている、最後尾の車両に乗っていた四人の客のひとりだった。彼が帽子とマフラーを取ると、そこにはハンネの見覚えのある顔があった。それはかつてベルゲン警察署にいた、セヴェリン・ヘガーだった。ハンネがかつて、ストックホルム警察の上官の汚職と不正を暴いたとき、ハンネに協力したのがセヴェリンだった。セヴェリンはまず、赤ん坊が死んだことを告げる。死にかけている赤ん坊を抱いて、助けてくれと部屋の扉を叩いた母親がいたと彼は話す。その赤ん坊は、ハンネが事故の際、抱き留めて助けたピンクの服を着た幼女だった。また、スヴェリンはベリットに、部屋を換えてくれと要求する。ベリットは、ロアーが見つかった「犬の部屋」をスヴェリントと一緒にいる男たちに使わせる。移動の際、男たちは、顔が分からないように、防止やマフラーで隠していた。

ロアーとシュタイナーの居なくなったことに気付いたカリ・トゥーレがまた騒ぎ出す。

「我々はここで起こっていることを知る権利がある。」

ハンネがそれに答え、

「あなたは正しい。確かに、皆には権利がある。」

と言った後、ロアーもシュタイナーも死んだこと、そしてロアーは他殺であるが、シュタイナーは事故死であることを告げる。医師のマグヌスが喘息の発作で倒れるが、ベリットの素早い看護で、事なきを得る。

 

風力十、猛烈な嵐。時速八十九から百二キロメートル。普通の人間がほぼ体験したことのない風で、電話や電気の線は吹きちぎられ、木で出来た塀は倒れる。土台のしっかりしていない建物は吹き倒される。

 

雪や風は強いが、外が僅かに明るくなってくる。ホテルに閉じ込められた乗客は、天候が回復に向っていることを感じ、明るい雰囲気が広がる。しかし、ハンネは焦り始める。天候が回復して、ヘリコプターによる救助が来れば、ここに泊まっている人々はバラバラになってしまう。それまでのこの事件を解決しなければならない。残された時間は僅かになってきた・・・

 

 

<感想など>

 

アガサ・クリスティーの「オリエント急行殺人事件」と「そして誰もいなくなった」を連想させる筋立てである。雪に降り込められたホテル、外との通信や出入りは困難ななかで、殺人事件が起こる。犯人はもちろん、そのホテルに泊まっている人物なわけである。閉じられた環境の中の犯人探し、また見知らぬ犯人と寝食を共にしなければいけないという「オリエント急行」と同様の緊張感が売り物になっている。牧師、年金生活者の老人、もうひとりの牧師、実業家、赤ん坊と、ひとり、またひとりと人が死んでいく。この緊張感は「そして誰もいなくなった」と同様である。

書き方的にも、アガサ・クリスティーに似ている。登場人物の、過去、深層心理等を延々と書くことはしないで、事件とその解決に必要なものだけを取り上げている。短くて、読み易いのだが、物語の中に深みというものを感じないのはそのせいだと思う。主人公のハンネ・ヴィルヘルムソンが語る「私」という一人称で書かれている。

ノルウェーで、列車を使ってオスロからベルゲンへ向かうと、途中に峠を通る。私もそこを通ったことがあるが、標高が千メートルを超え、真夏でも雪が残る場所であった。フィンセは実在する場所であり、原題となっている「一二二二」はその場所の標高である。

章の数が「風力」となっており、物語がクライマックスを迎えるにつれ、だんだんと風速が増す仕掛けになっている。、

作者のアンネ・ホルトは一九五八年生まれ、弁護士、ジャーナリストと活躍した人物で、何とノルウェーの法務大臣まで歴任している。主人公のハンネ・ヴィルヘルムソンは同性愛者で、彼女が時々電話をする「パートナー」は女性である。そして、作者のホルト自体も、同性愛者であり、パートナーは女性、しかし、ウィキペディアによると、娘がいることになっている。ハンネ・ヴィルヘルムソンを主人公とするシリーズは一九九三年から始まり、二〇一六年現在で、この「ノルウェー人の乗客」が、シリーズの最新作となっている。ハンネ・ヴィルヘルムソンは負傷が元で下半身不随になっており、そういう意味では「アームチェア探偵」、実際に自分は行動しないで、他人の話を聞くことにより事件を解決しようという探偵にかなり近い。

「殺人事件の犯人は誰なのか。」

という謎と同時に、

「列車の最後尾に増結された車両に乗っていたのは誰なのか。」

という第二の謎が提示される。このふたつが複雑に入り混じっている、あるいは、陰に政治的な陰謀が存在するのではないかと推理していたのだが、結末は驚くほどあっさりしていた。

 殺人事件のあった部屋を、警察の捜査の前に他人に使わせてしまったり、殺人事件のあった場所にいた乗客たちを、ろくに事情聴取をしないで解放してしまったり、腑に落ちない展開も多々ある。謎解き中心。かなりのご都合主義。ステレオタイプの登場人物。そう言った意味で、アンネ・ホルトは、徒労も含めて描き込むヘニング・マンケルの系統より、人時代前のアガサ・クリスティーの流れを汲む人だと思う。

 

20167月)

 

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