怒りのテニスボール

 

フランス王に対して、宣戦布告をするイングランド大使。フランス王はヘンリーと対照的にしょぼくれた老人。(グローブ座HPより転載)

 

ヘンリー五世は、フランス大使と会見し、フランス王よりの「贈り物」を受け取る。立派な箱を開けてみると、中に入っていたのは何とテニスボール。フランス王は、王の若さ、エネルギーを戦争ではなくスポーツで発散せよというのであった。

「女の子のことばっかり考えてないで、スポーツでそのモヤモヤを発散しなさい。」

と僕も、高校生の頃両親や先生に言われたものである。しかし、そんなことが可能なはずかない。たいていは逆効果になるもの。それに腹を立てたヘンリーはフランス遠征を決意する。

「その時代にテニスがあったの?」

と思う方もおられるだろう。実はあったのである。ハンプトンコート宮殿の中には、板張りの立派な室内テニスコートがある。

 さて、フランス遠征が決まると、兵士の募集が行われる。ロンドンの街では、フランス遠征軍の志願兵の募集が行われている。ある宿屋の前で、志願兵に応募したナイムとピストルという男が宿屋の女将をめぐってけんかを始める。ふたりともくたびれた中年男。彼等が争う女性も、すれっからしの中年女。冴えない喧嘩は、

「フォルストッフが死にかけている。」

という知らせで中断する。ヘンリーは皇太子時代、この宿屋を訪れ、「遊びの王様」フォルストッフ達と一緒に飲み、騒いでいたのであった。フォルストッフは寂しく息を引き取る。 このおじさん、シェークスピアの戯曲にちょいちょい出てくる、この世界では有名人なのだ。
 食い詰めていたナイムとピストル達は、金のためという不順な動機で遠征軍に参加する。三人の裏切り者を追い出したヘンリーの軍は、サウスハンプトンから意気揚々とフランスへ向かって出航する。フランス王とその側近は若いヘンリーの力を過小評価していた。ヘンリーはその油断につけこみ、アルフールを攻めそこを攻略する。しかし、いかんせん、寄せ集め部隊の海外遠征、兵士達は疲れ始め、補給もままならない。ヘンリーは、英国からの補給の期待できるカレーに戻ることを決意する。

「そうはイカのキン○○。」

フランス王はそれを阻止しようとする。フランス側は最初戦いを避けようとし、何度も使者を派遣し、身代金を払うならば、ヘンリーとその軍隊の通過を認めると勧告する。しかしヘンリーはそれをガンとしてはねつけ、イングランド軍とフランス軍の衝突は避けられなくなる。しかし、長い行軍で疲れ切ったイングランド軍に、数でも装備でも圧倒的なフランス軍に勝つチャンスはあるのだろうか。

いよいよ明日はフランス軍との決戦という夜、ヘンリーは普通の兵隊に身をやつし、兵士達の間に入る。そこで、兵士達の意気が軒昂であることを知る。感激したヘンリーは、神に勝利を誓う。

翌日、王は決戦を前に兵士達を鼓舞する。そして、いよいよ決戦の火蓋が切って落とされる・・

 

立見席の人々。舞台に近くて立っているのと、舞台から離れて座っているのと、どちらが良い?

 

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