お通夜

 

お通夜の席、昨年のヨーロッパ旅行の話に花が咲く叔父様、叔母様たち。

 

「あれっ、今日は同窓会かいな。」

僕は呟いた。目の前では、通夜の参列者達が三つのテーブルに分かれ、それぞれ寿司をつまみながら、和やかに、楽しそうに話をしている。やたら明るい雰囲気の「お通夜」である。特に、若い人が多いテーブルは盛り上がっていて、もう「コンパ」状態。継母の兄弟が座った「ご老人」テーブルでは、昨年のヨーロッパ旅行の話題に花が咲いている。

皆久しぶりに会って、話が弾むのは分かるし、皆に楽しんでもらって、棺の中の父もさぞかし喜んでいるだろう。誰かが、父の祭壇の前で記念写真を撮りだしかねない雰囲気。

「遺影の前で写真撮るとき、何て言うか知ってる?」

姉だったか従姉妹のサチコだったかに言う。

「?」

「イエ〜!」

「モトヒロちゃん、今日ぐらいは駄洒落、やめときよし。」

とたしなめられる。

 しかし、通夜の席で、刺身なんて「生臭いもの」を食ってよかったのかなと不思議に思う。僕はこれまで精進料理を食うものだと思っていた。

 通夜は六時に始まった。僕は次々と到着する親戚に挨拶するのに忙しい。十分ほど前に、報恩寺のお住職が到着。母、姉、僕の三人で控え室へ行き、和尚に挨拶をする。

六時になり、昨日決めた席順に着席して待っていると、濃い紫の衣に金ピカの袈裟を身に着けた和尚が静々と入場。読経が始まる。和尚の声は明瞭で分かり易いが、風邪を引いておられるのか、時々咳が入る。我が家の菩提寺、「鳴虎報恩寺」は法然上人を始祖とする浄土宗知恩院派である。従ってお経は、「南無阿弥陀仏」の斉唱で終わる。

焼香が済んで、和尚さんが退席された後、三つのテーブルに食事が並べられる。

「モトヒロちゃん、何か挨拶しな。」

と姉が僕に振ってくる。

「ええっ、そんなんプログラムにないやん。突然言われても・・・」

と思いながらも、

「本日は皆様お忙しい中、お集まりいただきまして、云々云々。」

と適当に挨拶する。そして、その後は「同窓会」になった。

皆が帰った十時前、Fさんとチビチビ飲んでいると、トモコが焼香に現れた。後で聞いたが、「家族葬」と聞いたトモコは、わざわざ時間をずらして拝みに来てくれたとのこと。いつもながら気の利く人である。

「通夜」ということで、建前上はFさんと僕が父と一夜を過ごさなくてはならないのだが、

「まあ、いいでしょう。」

ということで十一時にふたりで会場を出て、僕は父の家に戻って眠った。