モトのモットー

 

ムーラン・ルージュの赤い風車。いや、ムーラン・ルージュが赤い風車という意味。

 

オペラ座も屋根に金色の飾りのついた、威風堂々とした建物。

「パリの建物はどれもでかいわ。」

と改めて感心する。これだけ大きい建物だと、地下に秘密の部屋があって、そこに怪人が一人ぐらい住んでいても不思議のない気がする。「怪人」のミュージカルによると、地下に池まであるのだ。

オペラ座の正面の広い道を真っ直ぐ行くとルーブル美術館。その建物も遠くに見える。しかし、僕は何となく「ガス欠」気味、カラータイマーが「黄色」になりかかっていた。

「ボチボチ帰るかな。」

まだ三時過ぎだが、「オペラ」駅からRERに乗り、途中で乗り換えて空港へ向かった。ルーブルやオルセーなど美術館にこそ行かなかったが、二日間で沢山回ったと思う。何となく、自分で組んだスケジュールをひとつひとつ「消化」しているところが、「日本人観光客」なんだなと思う。でも、三時過ぎにもう疲れてギブアップするところが僕らしいが。

僕は少し退屈していた。パリの街が退屈だったわけではない。二日間会話がなかったからだ。綺麗な場所を訪れても、やはり、

「綺麗やね。」

と言える相手がないと寂しいもの。ヴェルサイユ宮殿の入り口であったチャーミングな女性と、もう一度宮殿内や庭園で会わないかなと期待したが、その偶然に頼るには、余りにもヴェルサイユは広すぎた。

ホテルに戻り、今日は中華料理店が休みなので、フランス料理を食べる。フォアグラなどというものに挑戦してみた。トーストに塗り、少しジャムを乗せて食べるのだが、有名なだけあって悪くない。

月曜日、仕事が始まった。またアーロンに迎えてもらって、会社に着く。二日間ほとんど会話のない生活だったので、他人との会話が始まって少しホッとした気分。

顧客からの貨物の最終便が到着し、それをエリックとチボーが登録して行く。入らない品物があると、その原因を僕が調べてデータを調整する。僕は倉庫に入り浸り。飯を食っている暇がないので、Iさんにサンドイッチを買ってきてもらい、それを左手で持って食べながら、右手でコンピューターを操作する。フランスのサンドイッチはもちろんフランスパン、バゲットなので、カリッとしてそれなりに美味い。

昼から出荷オーダーのデータが入り始め、それの検証をする。エリック、チボー、ムッシューV,僕が一緒になって出荷オペレーションをやる。僕はコンピューター担当だが、手の空いているときに自分の出来ることなら何でもする。

「手を汚さない者は成功しない。」

「手を汚さない人には誰もついて来ない。」

これが僕のモットー、つまり「モトのモットー」である。

 

「オペラ座の怪人」ならぬ「オペラ座と変人」。

 

<次へ> <戻る>