モンマルトルの丘に立つ

 

モンマルトルの丘に立つ白いサクレ・クール教会。ちょっと異国風の風景。

 

一度メトロを乗り換えて、アンヴァーという駅で降りる。パリの地下鉄は皆、白と薄緑に塗られている。しかし、車両自体は各線によって微妙に違うのが分かる。

駅から出て、狭い商店街を行くと、建物の間から、丘の上に立つ白いサクレ・クール寺院が見えた。寺院に登る階段の下まで来て、僕はそこも「アメリ」の映画に出てきた場所であることを知った。忘れ物を取りに来た男が、ここでアメリによって右往左往させられるのであった。

白い教会と濃い青空の鮮やかな対比から、何かギリシアの風景を思い出してしまう。両側が階段になっていて、真ん中が芝生の斜面になっている。ちょうど正面から日差しが刺し、芝生の斜面は日光浴にもってこい。僕も、しばしそこに佇んで、今年最後になるかもしれない、太陽の光を楽しむ。丘の上からのパリの眺望も素晴らしい。

モンマルトルの辺りは、ちょいと猥雑な感じの商店街になっている。シャンゼリゼのポッシュな雰囲気とは正反対の庶民的な雰囲気だか、僕はどちらかというとモンマルトルが好き。三枚の黒いコースターをダンボール箱の上に並べ、それを素早く動かし、そのうちの一枚の裏が白いものを通行人に当てさせるゲームをしている親爺が何人もいる。多分、流行の手っ取り早い稼ぎなのであろう。

またメトロに乗って、サン・ジェルマン通りへ。ここもシャンゼリゼのように結構ポッシュな場所だが、シャンゼリゼに比べると、カフェ、レストランが多い。同僚で「フランス通」のトモヨの情報によると、ここに美味しい日本の蕎麦屋があるらしい。しかし、見つからなかった。残念。

天気が良いので、カフェでは歩道にまでテーブルと椅子を並べ、どこもほぼ満席になっている。人々は太陽を浴びながらコーヒーやビールを飲んでいる。食事をしている人もいるが、その食事の五十センチ向こうを、僕のような通行人がウロウロ歩いているわけで、随分落ち着かない食事のような気がするが。これがパリ風なのであろう。

蕎麦屋が見つからないので、サンドイッチを買って、歩道に並んでいるテーブルに席を取って食べる。そのベーコンとトマトとレタスのサンドイッチが七ユーロ。余りの高さに開いた口がふさがらない。

サン・ジェルマンから歩いて十分ほどのリュクサンブール公園へ行く。テニス場や子供の遊び場のある公園と、「セナート」(元老院)の庭と融合されている。ここも散歩や日光浴をする人々で賑わっている。

午後四時、歩き疲れた僕は、サン・ミッシェルから空港行きの電車に乗る。出来るだけメトロを利用するようにはしたつもりだが、今日はよく歩いた。

ホテルに帰って風呂に入り、一昨日Iさんと行った中華料理屋へ行く。午後七時。僕が最初の客だった。レストランは七時ごろに開き、八時、九時とボチボチ混んでくるという感じ。フランス人の夕食は遅いのである。

 

リュクサンブール公園。日光浴とお昼寝をするお姉さん達。僕も眠くなってくる。

 

<次へ> <戻る>