エピローグ・波の模様

 

映画「パピヨン」の一シーン。音楽も良い。

 

 ティンタジェル城を見た後、僕たちは細い木の階段を下りて、海岸出た。岩浜で、僕とミドリは岩に腰かけていた。マユミとスミレは、崖にえぐられた洞窟を見に行っていた。座っている僕たちに向かって、波が打ち寄せて来る。波というのは面白い。次々と打ち寄せて来るが、二度と同じパターンはない。

「ミドリ、『七番目の波』って知ってる?」

「うん、パパが勧めてくれた本でしょ。確か、デヴィッド・グラッタウアーとかいう人が書いた。面白かったわ。」

厳密に言うと、ダニエル・グラッタウアーというオーストリーの作家が書いたんだけど。まあいい。偶然、間違いメールで知り合った男女が、メールで交際を深めるというストーリー。僕の好きな本で、ミドリにも推薦した覚えがある。彼女も読んで、覚えていてくれていたのが嬉しい。

ただ、「七番目の波」のオリジナルは、スティーブ・マックイーンとダスティン・ホフマンが主演した、一九七三年の映画「パピヨン」である。ルイとパピヨンというふたりの男が、絶対脱出不可能な、絶海の孤島「悪魔島」にある刑務所に送られる。ダスティン・ホフマン演ずるルイが、繰り返し打ち寄せる波を観察し、波のパターンが毎回違うのに気付く。そして、七番目に大きな波が来るという「法則」を見つける。その「七番目の波」に乗って島からの脱出できないかと、二人は考え始める・・・そんなストーリーだった。

僕は波を見るのが好きだ。波を見ているといつも思う。

「自分の人生は、波の中の泡の一粒のようなものだ。」

と。とてつもない宇宙の広さと、とてつもない宇宙の時間の長さを考えると、自分の一生は、一瞬現れ、次の瞬間に消えていく、波の中の泡のようなもの。今から八百年前、鎌倉時代、鴨長明は、水の上に浮かぶ泡を見ながら、僕と同じことを考えていた。

「よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」(方丈記)

 今回、コーンウォールで、ずっと打ち寄せる波を見ていた。波の織りなす模様は、美しかった。僕は、その中で、ひとつのインスピレーションを得た。

「波の絵を描いてみたい・・・」

僕は小さいころから、絵を描くのが好きだった。しかし、最近はほとんど描いていない。

「この波の模様を絵に描けたら素晴らしいだろうな。」

と思う。自分のテクニックが付いて行けるかどうか分からないが、一度挑戦して見たい。コーンウォールは、本当に、波の美しい場所だった。

 

この、波の織りなす模様を絵に描けたらと思う。

 

(了)