刺身は食べられたか

 

一軒の家のためだけに架けられた不思議な橋。

 

コーンウォールは魚の美味しい場所。昨年の秋滞在した時には、歩いて行けるポート・アイザックという町に、漁港と魚市場があり、そこで新鮮な魚を買うことが出来た。朝獲れた魚を買ってきて、刺身にしたり、みそ仕立てで鍋物にしたり。とても美味しかった。今回も、それを期待。刺身を作ることを前提に、包丁から砥石までを持参していた。着いた夜、娘のスミレと一緒に、グーグルで「漁港」、「魚市場」を検索した。その結果は・・・残念ながら、ペランポートの近くには、漁港も魚市場もなかった。しかし、近くの町に「フィッシュ・モンガー」、つまり、魚屋はあるようだ。

滞在六日目。その日は雨の予報。朝起きたら、予報通り雨が降っていた。今日は歩くのは無理。僕も二日続けて歩いた後なので、ちょっと休養が欲しいところ。朝食の後、僕たちは車で、近くにある、比較的大きな町、ニューキーに出掛けた。そこに、魚屋があるという。ニューキーは確かに結構大きい。商店街に魚屋が。そこに並んでいる魚を見て、かなり失望。

「目が死んでいる。」

妻も僕も金沢に住んでいたので、魚の目利きは出来る。しかし、魚の横にある、ロブスターとカニみそに目が行った。ロブスターもカニも茹でてある。僕たちは、ロブスター一匹と、カニみそを容器に一杯買った。カニは、身を買うと高いが、内臓の部分は只に近い値段。ロブスターも一匹二千円ほどだった。

 魚屋を出て、ニューキーの街を歩いてみる。ここも海辺のリゾートという感じ。砂浜を取り囲むように、斜面に沿って街並みが広がり、リゾートホテルや、ホリデーアパートメントが多い。砂浜を見下ろす場所で、僕は不思議な景色を見た。砂浜にそそり立つ岩の上に、一軒の家が立っている。そして、「本土」からその岩に橋が架かっているのである。

「一軒の家のためにわざわざ橋を架けたんやろか?それとも、橋があるから、誰かが家を建てたんやろか?」

謎が深まる光景であった。

 その日の夕食に、僕たちはロブスターとカニみそを食べた。レモンをかけて、白ワインと一緒に食べるロブスターとカニみそは最高。ロブスターも肉よりも、内臓の方が、複雑な味で美味い。添え物には、アンチョビーやオリーブを入れて地中海風の、マカロニサラダを作った。刺身は食えなかったが、ロブスターに僕たちは満足した。

「もう一度ロブスター、食べたいよな。」

と、誰からともなく話が持ち上がる。グーグルで調べてみると、隣町のセント・アグネスの少し向こうに、魚の卸売りをやっている会社があるとのこと。帰る前日に、そこへ行ってみる。草原の真ん中にある、飾り気のない倉庫のような建物。そこにロブスターがあった。しかも、一匹千円以下という夢のような値段。二匹買った。その夜、僕たちは飽きるほどロブスターを食べた。新鮮で、身もコリコリしていて、とても美味しかった。

 

 

飽きるほどロブスターを食えたのが、今回の休暇の最大の収穫かな?

 

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