お花畑

 

ゴースの花の黄色と、海の色のコントラストが素晴らしい。

 

コーンウォールに着いた二日目、ほぼ一日中、絵を描いて過ごした。これまでずっと京都を題材にした絵を描いてきたが、今回からは英国を題材にすることに。妻と娘たちは、隣町のセント・アグネスにある、ナショナル・トラストの海岸を歩きに行っている。昼飯にラーメンを食って、引き続き絵を描いていると、二時半ごろに皆が戻って来た。意外に早い。海岸を二時間半ほど歩いてきたが、風が強くて歩きにくかったという。天気は最高で、家にいるのが惜しいくらい。

三日目、腰もかなり良くなってきたので、歩いてみることにする。皆と同じペースで同じ距離は歩けないが、一時間ほどゆっくり行って、独りで帰ってきて、車の中で、オーディオブックでも聴いて待っていようという計画。その日も天気は最高。昨日、家族が行ったセント・アグネスの一つ向こうの、ノース・クリフスという海岸を歩く予定になっていた。

ナショナル・トラストの駐車場に車を停めて、細い道を通って海岸に出る。崖の上に沿って、遊歩道が続いている。思わず息をのむ。

「わあ、海の色がきれい。癒される。」

翡翠色と言うのだろうか。冬の海のように灰色ではなく、夏の海のように真っ青でもなく、緑と青の中間の、絶妙の色合い。辺りには一面に黄色い花が咲いている。僕たちは、その黄色い花を分け入るように、歩き出した。後で調べたのだが、その黄色い花はゴースという名前で、日本語ではハリエニシダと呼ばれているという。

今回、トレッキングをしていても、結構気温は低かった。写真を見てもらったら分かるが、妻などはダウンジャケットを着ている。昼間の気温は十二度から十五度くらいで、休憩や昼食のために立ち止まると、汗が引いて結構寒かった。しかし、まだ気温の低い時期にコーンウォールを訪れて、良いことがあった。それは、野生の花が一斉に咲く季節だったからだ。海岸には、黄、紫、白、青、ピンクなど、色とりどりの野草が咲いていて、お花畑の中を歩いている気分。

その日、一時間ほど歩いて、同じ道を戻る。ミドリも付き合ってくれる。妻とスミレは、それから二時間ほどの周回コースを歩いてくるという。また一時間ほど海岸の崖の上を歩いて車に戻り、ミドリと一緒に弁当を食べる。スミレからのメッセージによると、近くのテハディ・カントリー・パークのブルーベルがきれいとのこと。昼食の後、車でその公園まで行ってみる。駐車場に車を停めて、自然公園の中に入ると、森の中、木の下に、無数のブルーベルが咲いていた。一週間前、家の近くのブルーベルのきれいな森に行ったが、今年は寒いのか、まだ余り咲いていなかった。その分を取り戻すくらい、沢山のブルーベルが見えた。

妻とスミレとの待ち合わせ場所まで車で行き、芝の上に横になる。周囲は色とりどりの花。

「お花畑で昼寝をすると 蝶々が飛んできてキスをする。」

そんな歌が口から出る。

 

 

ブルーベル、今年も見られた。コーンウォールで見るとは思ってなかった。

 

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