英国風朝食

 

つまらないことを真剣に話すエヴァルトとデートレフ。上空には飛行機が通り過ぎて行く。

 

 木曜日、フランクフルトでの仕事の二日目。また同じ場所での打ち合わせだ。今日も暑い日、膝を痛めていることもあって、カロラは階段の昇り降りに難渋している。

「どうしてここはエレベーターがないの。」

とボヤき始めた。暑さで参加者がイライラしているせいか、打ち合わせも難航した。結局、プロジェクトをまとめていくために、僕がプロジェクトマネージャーを引き受ける破目に。大変そうだが、またドイツに来る機会はありそうだ。

午後三時半フランクフルトを出て、メングラに向かう。蒸し暑い日が続いていたが、案の定、途中何度か雷雨に遭う。また何度も渋滞も出会う。往路の車の中では結構四人で話をした。しかし、復路の車の中では会話がほとんどない。皆疲れているのだ。特に、二日間、会議の進行役でずっと喋り続けていた僕は、もう一言も口を聞きたくないという気分。

八時前にメングラのホテルに戻る。新しい部屋に入って驚いた。メチャ広いダブルルームなのだ。これまでで一番良い部屋。今日が最後の夜。だから一番良い部屋をくれたのだろうか。夕食にまた「シュパーゲル」を食べる。白アスパラと辛口の白ワイン、日本酒と「ヒラメの縁側」に相当する最高の組み合わせだと思う。

金曜日、ロンドンへ戻る日だ。例によって朝の散歩。一泊だけなので、フランクフルトから帰ってから荷物は解いていない。従って荷造りの必要もない。いつもは黒パン、鮭とニシンと野菜、果物というスカンジナビア風朝食メニューだが、今日はスクランブルドエッグ、ベーコン、ソーセージ、ベークドポトテという英国風の朝食にしてみる。

朝は結構寒かったが、昼間には暖かくなる。これも例によってまた昼の散歩。それも今日が最後だ。パートナーのブリギッテがいないのでちょっと寂しい。彼女は今、休暇でベルギーとの国境にある森で友人とトレッキングをしているはず。彼女は独身なのだ。

四時前、デートレフの車で会社を出て空港に向かう。ライン河の手前で雷雨に遭う。彼は、僕が日本人の経営陣と結構仲良くやっているので、自分たちドイツ人の評価について、話がなかったかしきりに聞いてくる。しかし、疲れてくると、相手が親友でも、だんだんと話すのがおっくうになる。

預ける荷物の重量が超過しそうになるが、ラップトップの鞄に重いものを詰め込んで、超過料金は免れる。その代わり、重い荷物を手荷物として担いで歩けなければならない。これも例によって、空港内の寿司屋へ日本酒を飲み、寿司を食べる。

午後七時。ルフトハンザ機はロンドンへ向かって離陸。直前に雨が降り出した。一時間の時差と一時間の飛行のため、英国時間の午後七時に着陸。車で家に戻る。

マユミに会う。父は快方に向かっているとのこと。しかし、実際に会って父を自分の目で見てみたい。僕は飛行機の中である決心を固めていた。

「来週からのコルシカでの休暇を僕だけキャンセルして、出来るだけ早い機会に日本へ帰ってもいい?」

 

帰りの飛行機の隣の席のお姉さん。レネー・セーウィガーに似ていた。

 

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