話好きの乗客たち

 

トレッドミルで走るのも・・・

 

土曜日、いつものように五時半に目を覚ます。

「休みの日くらいゆっくり寝てたら。」

といつも妻に言われるのだが、それができないのが僕の性分。週末であろうが、休暇中であろうが、いつもこの時間に目が覚めて、その後眠れない。「目覚まし時計要らずのモト」と呼んで欲しい。眠りたいだけ眠れる妻がうらやましくなることもある

船は激しくというわけではないが、ゆったりとしたリズムで揺れている。ローリング、横揺れもあるが、ピッチング、前後の揺れもあり、時々冷蔵庫の上のティーカップや、湯沸し器がカタカタと音を立てている。

寝ているとそうでもないが、起きると船酔いを感じる。六時過ぎ、ジムに行ってみようと廊下に出る。廊下を歩いていても、船が左右にローリングしているために、何となく真っ直ぐ歩けない。酔っ払ったようにジグザクに歩いてしまう。

「姉と妹ぉ比べてみれば〜、姉は姉だけ歳が上〜と。ヒック。」

足元が定まらないと、何となく酔っ払いになった気分。

ジムはまだ開いてなくて、また船室に戻り、日記を書く。コンピューターで何かを書くとか、本を読むとか、目を使う仕事をすると、船酔いで気分が悪くなり、その都度少し横になる。八時前、マユミが起きてきたので、改めてジムに行く。ジムは船の先端にあり、前面がガラス張り。全てのトレッドミルが船の進行方向に向けて置かれている。目の前に迫ってくる海に向かって歩いているような気分。四十五分ほど歩く。トレッドミルの前の画面に船の現在地が出ている。船は今、フランスのブルターニュ半島の沖を走っている。

汗をかくと船酔いが治った。着替えて九時過ぎに朝食を食べにレストランへいく。バイキングではなく、ちゃんとウェーターが給仕をしてくれる。七人でひとつのテーブルをシェアしての朝食。ベーコン、ソーセージ、焼きトマト、レバー、ポーチドエッグ、血のソーセージなどの付いた、イングリッシュ・ブレックファストを選ぶ。全て注文した後ウェーターによって持って来られるので、食べ終わるまでに小一時間かかる。かなり大層な朝食。また、カロリーも高そう。

「せっかく高いお金を払ってるんだから、バフェット(バイキング)じゃいやよね。」

と一緒の席の女性が言った。

テーブルの決まっている夕食以外は、食事を共にするのは偶然に一緒に座った見知らぬメンバーである。その割には会話が弾む。それも道理、基本的に皆同じ境遇で、時間だけはたっぷりある人たちなのだから。しかし、世の中には社交的な人ばかりではない。そんな人にはちょっと辛い境遇かも。でも、そんな人はクルーズなどに来ないのか。

朝食の後、ダンスクラスへ。船の中では、ダンスのクラス、料理のクラス、美術のクラス、スポーツのクラス、各種音楽会と、一日中何らかの催し物が行われている。船の中には「新聞」があり、そこには毎日「何処で何があるか」が書かれているのだ。

 

…ダンスをするのも、床が揺れているだけに、バランスを取るのが難しい。

 

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