ゲント

 

ゲントの街は馬車で観光も可能。誰かと一緒だったら間違いなく乗っていた。

 

列車は九時半前にゲント・セント・ピータース駅に着いた。若者のコスプレの大会があるらしく、列車の中や、駅前に、魔女や悪魔やスーパーヒーローたちがたむろしている。さすがにセーラームーンや「こち亀」の両さんはいない。女性のコスプレというのは、必然的に露出度が高い。気温が十度前後しかない中で、肩とか、お腹を出した若いお姉さんたち、寒むそう。

「知〜らない町を歩いてみた〜い」

永六輔さん作詞の「遠くへ行きたい」ではないが、「知らない街に着いたら歩いて道を覚える」というのが僕のモットー。歩けば辺りの様子も分かるし、距離感、土地勘も身に着く。僕は駅から旧市街に向かって歩き出した。歩き出してから初めて、結構距離のあることに気づく。ゲントは結構大きな町なのだ。後で調べてみると、ベルギーで三番目に大きな都市だという。一番はブリュッセル、二番はアントワープ。

この町はオランダ語圏。標識や看板がオランダ語で、ドイツ語は読めるがフランス語が読めない僕は、標識や看板に書いてあることが分かるので、ホッとする。僕はオランダ語を勉強したことはない。ドイツ語とオランダ語はそれほど似ているのだ。「ゲント」と書いたが、これは英語の発音。オランダ語では「G」が「は行」の発音になるので「ヘント」という発音になる。フランス語では「ガン」である。「ヘント」というのはケルト語で「川の出合う場所」という意味とのこと。つまり、僕の苗字の「川合」と同じ意味。何となく親しみを覚える場所である。

トラム、路面電車の線路に沿って三十分以上歩いて、運河に架かった橋を渡り、旧市街に入る。トラムに乗ろうかとも考えたが、どこで切符を買っていいのか分からない。ベルギーの町では、大抵このトラムが走っている。

まず大聖堂、鐘楼、その他教会を見る。かつては北ヨーロッパで最大で、一番裕福な街だったという。その名残か、建物はどれも大きく、威圧感がある。美しかったのは運河沿いの街並みだ。「天井のない美術館」ブルージュも運河沿いの建物が美しいが、ゲントの建物はブルージュよりうんとカラフルだ。色とりどりのファサードが、青空と共に運河の水面に写って美しい。石の橋のアーチの下側に、水面から反射した太陽の光が、河村名古屋市長が着ているシャツのような模様を作っている。それがユラユラと揺れ動くのが美しい。

「なかなか良い街なのに、どうしてブルージュほど日本人観光客に有名でないんだろう。」

僕は考えた。確かに、ふたつの町はよく似た街並みなのに、僕の目から見ても、ブルージュの方に軍配が上がる。やはり、「しっとり度」ということだろうか。ゲントはちょっとケバい。ブルージュの方が、しっとりとした印象があり、それが日本人の気質に会うのだと思う。ブルージュが銀閣寺とすれば、ゲントは金閣寺というところか。

十一時半まで、街を観光して、沢山写真を撮った。絵葉書を買ったときに、土産物屋のおばちゃんにトラムの切符の買い方を聞く。帰りはトラムに乗る。

 

ベルギーや北フランスでは、鐘楼が教会とは別に建っていることが多い。鐘楼巡りのツアーもあるという話だ。

 

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