アントワープ中央駅

 

威風堂々たるアントワープ中央駅、栄えた町だったことが忍ばれます。

 

「ベルギー第二の都市とかけて、『ぼた餅』を持って『宇宙戦艦ヤマト』に乗ったときととく。」

「そのこころは?」

「『餡』と『ワープ』、アントワープ。」

「お〜い山田君、円楽さんに座布団一枚。」

いきなり、読む気をなくさせるような駄洒落ですみません。アントワープ、ベルギーにある町です。「ウィキペディア」では以下のように紹介されています。

「アントウェルペン(オランダ語: Antwerpen、フランス語: Anvers、英語: Antwerp)は、ベルギーのフランデレン地域・アントウェルペン州の州都で、ベルギー第二の都市。英語名に由来するアントワープや、フランス語名に由来するアンヴェルス(アンベルス)も日本語の表記においてよく用いられる。 二〇一二年一月一日の総人口は五十万二千人・・・」

金曜日までブリュッセル出張があったのですが、もう一日ベルギーに残って、きれいな町だと常々噂に聞いているアントワープを訪れることにしました。金曜日の仕事は意外に早く終わり、昼過ぎに列車でブリュッセルを発つことができて、一時間足らずでアントワープに着いたときはまだ三時ごろでした。

その日、私は少しがっかりしていました。「津軽海峡冬景色」の時代から、傷心の人間は列車に乗って旅立つものなのです。前夜、サッカーの欧州選手権で、応援していたドイツが負けたからでした。私は、ホテルのバーで、中継を見ていたのでした。

「ぐぞ〜。」

列車の中では、隣に座っていたベルギーに住んでおられるチェコ人の家族と話していました。小学生くらいのふたりのお子さんを連れておられます。そのご家族は十月に日本を旅行されるとのこと。私が日本人だと分かると、日本での見所、宿泊、交通などを聞いてこられました。そんな質問に答えているうちに、あっと言う間に列車はアントワープ中央駅に到着したのでした。別れ際に、その家族のご主人が、

「今週末アントワープで『ボートレース』があるので、私たちはそれを見に来たのですよ。」

とおっしゃいました。ボートレースって、毎年春にテムズ河で行われる、ケンブリッジ、オックスフォードの対抗戦みたいなものなのでしょうか。

アントワープに列車で到着した人は誰も、その中央駅に感心するのではないでしょうか。まず、ホームが四層になっていることに、そして、その壮大で豪華な建物に、旅行者は度肝を抜かれます。私も早速度肝を抜かれちゃいました。この駅のホームは、縦に作られており、各層にホームが二本。計四層がエスカレーターで繋がっているのです。私の列車の着いたのは最下層で、そこからエスカレーターを何度か乗り換えて地上階に出ました。そこは、宮殿のようなでっかい建物。ロンドンのセント・パンクラス駅も壮大な建物として有名ですが、アントワープ中央駅は、おそらくその上を行くのではないでしょうか。

 

教会でない世俗の建物でここまで立派なもの、私は英国の高等裁判所しか知りません。

 

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