日本人の英語

 

英語でお相手をしてくれる、若い運転手兼ガイドのMさん。

 

披露宴の翌日、月曜日の午前、僕は「サンダーバード」で金沢から京都に向かっていた。

「実際、良い披露宴だったよな。」

僕はつぶやく。これまで、何回か結婚式、披露宴に出てきたが、息子のパーティーは、その中でも一番盛り上がっていたと思う。その理由は?と考えると、遠方から集まった(ある人は地球の裏側から来た)出席者の、

「時間とお金を使って来た日本、ワタルとゾーイの披露宴、何が何でも楽しいものにするぞ。」

という「気迫」だったと思う。「せっかく来たんだから、楽しまないと」そんなひとりひとりの思いが凝縮されて、楽しいものになったように思う。

列車の中、

「ちょっと眠っていきたいな。」

と思いながら、眠れないままに、ボンヤリと窓の外を眺めていると、三十代後半と思われる車掌さんが検札に来た。

Where are you going to?

と英語で聞かれる。僕はこのシチュエーションにもう慣れていた。それは僕が、基本的に日本人は買えない「ジャパン・レイル・パス」を見せたから。「JRパスの持主」イコール 「外人」ということになる。彼の英語は決して理想的な発音ではないが、結構、堂々と話しかけてくるところが気に入った。

 今回、帰国して、日本で英語がかなり通じるようになっていることに驚いた。列車の車掌、駅の改札係、タクシーの運転手、銭湯のお兄さんまで、結構英語で外国人に応対しているのだ。

「これもオリンピック効果かな。」

 京都で、息子の嫁のご両親と一緒に、観光ハイヤーで金閣寺や嵐山を回った。その運転手のMさんも、少し英語が話せた。彼は、運転手だが、ガイドとしても同行してくれる。ハンさん夫妻と四人で歩くことになるが、そんなとき、僕がご夫婦のひとりと一緒に歩き、その後ろか前をMさんがもうひとりと歩くことになる。そんな場合、彼に少し話をしてもらえると助かる。

「会社から二か月間、英国のノリッチにある語学学校に入れてもらったんです。」

Mさん。う〜ん、そこまで。送る方も送られる方も、それなりの気合が入るシチュエーションだと思う。送る方は結構な費用を負担するのであるし、送られる方はその期待と負担に応えなければいけないと努力する。

 今回、日本で感じたのは、「日本も国際化しなくてはいけない、日本人はもっと英語を話さなければいけない」という切迫感と、それなりの「気合」であった。「下手でもいいからとにかく話す」という日本人の一番苦手な点が、少し克服されてきたような気がする。

 

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