ザ・イザカヤ

 

伏見稲荷千本鳥居、全部回ると結構タフなコースである。

 

「わあ、本当の『イザカヤ』。素敵!」

とゾーイが言った。ワタルが

「京都で食べる夕食、一回はフォーマル、もう一回はカジュアルにしてね。」

と言ってきた。それで、二日目の夕食は、家から歩いて十五分ほどの居酒屋になったのである。この店、何度か来たが、味、値段、雰囲気ともに気に入っていた。今日の会食の参加者は八人である。息子夫婦、ハンさん夫婦の他に、明日関空からロンドンに発つため金沢から京都に移動したスミレとヴァレンティン、それに継母が同席する。

伏見稲荷から戻ったあと、少し休憩。スミレとヴァレンティンの到着を待ち、六時過ぎに居酒屋へ向かって歩きだした。途中で、息子夫婦とハンさん夫妻が合流する。ヴァレンティンは日本に来るのも初めて、もちろん居酒屋に行くのも初めてである。

「『イザカヤ』ってどんなもの?」

と聞かれて、色々と説明を始める。彼の持っているイメージで、一番近かったのがスペインの「タパス・バー」であった。ワインと、小皿に入った「おつまみメニュー」が並ぶところなんか。

僕たちが店に着くと間もなく継母も到着、八人が掘り炬燵を囲んで、小さな座敷に勢ぞろいする。例によって、初対面の挨拶と、プレゼントの交換が行われる。ハンさん夫婦は、義母や、僕の母たちに随分高価なプレゼントを用意し、それを東京からずっと持ち歩いているのである。ご苦労様。

 生母と同じように、継母も物怖じしない人なので、今日も話が弾む。今日は、スミレも、通訳と料理の注文係をやってくれているので、昨日に比べてうんと楽。

「スミレ、おまえ、結構日本語上手やん。」

いつも、僕とは英語しか話さないのに。

 継母は俳句をやっている。「世界で一番短いポエム」ということで、音楽家で、芸術方面には詳しいヴァレンティンがウンチクを傾けている。注文を取りに来たお店の若奥さんが、色々な言葉が飛び交っているので驚いた様子。「気合の入っている」ハンさん、エレンさん、ゾーイは、何を飲むか聞かれて、もちろん、

「サケ!」

竹を切った容器に入った冷酒を飲んでいる。

 居酒屋メニューを二十種類くらい食べた後、九時近くになり、勘定を済ませていると、マスターが聞いてくる。

「今日はどんなご会合なんですか?」

「あの人たち、うちの家族なんです。今日は家族の夕食会。ドイツ人が一人とシンガポール人が三人。」

「へ〜え、ずいぶん、国際的なご家族ですね。楽しそうで、うらやましいです。」

とマスター。確かに楽しい。でも、正直、毎日だとちょっと疲れるんだよね。

 

京都の居酒屋に集まった家族の皆さんたち。妻と娘のミドリはまだ金沢にいる。

 

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